47 最終話
リンゴーン、リンゴーン。
王都一高い教会の塔から、鐘の音が響き渡る。
雲一つない晴天の日。
イリアス王国王太子フィリップとチェスター侯爵家長女レイシアの婚姻式が、この良き日、王都で執り行われる。
王都の町はひと月も前からお祭り騒ぎで、国のため奔走する素晴らしき王太子と、それを身を持って支える美しき令嬢との婚姻を心待ちにしていた。
*****
王都の中でも特に歴史の深い、荘厳な礼拝堂で女神に愛を誓い合う二人は、誰の目からみてもこれからの幸せに満ち溢れている。
「―――生涯に渡り、汝の愛する者を慈しみ、生涯にわたってその愛を貫くと誓いますか。」
大司教が誓いの言葉を読み上げる。
「誓います。」
「誓います。」
二人はともに目を伏せ、祈りの姿勢でその誓いの言葉を交わす。
「二人に永遠の女神の愛を。」
大司教がそう宣言すると、周囲から花が舞い、二人の歩む道を色鮮やかに飾り立てる。
二人で腕を組み、礼拝堂の外へと出れば、大勢の国民が二人の門出を祝うため、広場に集まり歓声を送っている。
「王太子さまー!」
「妃さまー!」
「おめでとうございます!」
鮮やかに飾り立てられた王都と、この時のために用意された魔法師による幻影魔法が、見える景色すべてを美しく彩っていく。
(この景色は―――あの漫画のラストシーンと同じだわ。)
唯一違うのは、今ここに花嫁として立っているのは聖女ではなく、レイシアだということだ。
それでも、もうこの場所を誰にも譲る気はない。
笑顔で参列者や民に大きく手を振る。
それを見て、観衆の歓声はより一層盛り上がりを見せる。
そうして手を振り続けていると、隣に立った、先程夫となったばかりの麗しき王子が耳元で囁いてくる。
「僕以外にそんなに笑顔を振りまかれると妬いてしまうな。」
おどけたようなその言い方が、彼にとっては冗談でも軽口でもないことを、自分はもうよく理解している。
「君の美しい笑顔は誰にも見せたくない。見ている全ての者の目をつぶしてやりたくなるよ。」
そう言ってほの暗い笑顔を見せる夫を、仕方ないなと微笑ましく思える自分がいる。
「私にはあなた様だけです。あなたも私だけを見ていないとダメですよ。」
そう耳元で囁き返せば、目を丸くして少し驚いた表情を見せる。
その顔が愛おしくて、彼の首にそっと腕を回し、引き寄せてキスを交わした。
そしてまた、より一層大きな祝いの歓声が、王国に響き渡るように舞い上がるのだ――――
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