ちくわぶ無双とたんぽぽのシンギュラリティ
彼の名前は池田了といいます。
現代を2020年代として生きてきたこの青年は、滞りなく両親のもとから一男として生誕しました。
所詮は数十億いる人間のたった一人なわけで、とりわけ語ることのないような人物でしたが、仕方ないので説明すると、食べるものには困らないし少し大きな問題がなければ大学に行けるような貧乏とは言えないが裕福とも言えない、どちらかといえば裕福な家庭にあった。
彼の好物は味噌汁だったし、優しくすることがあればわがままを通そうとすることもある平々凡々な人間性であることは滝が下に落ちるように当たり前のことであった。
こんなありきたりな池田了青年には一つだけ、語るほどの価値があるお話がありました。
彼が14歳で、まだ誇大妄想気味の調子に乗っているガキであることが仕事な年頃であったのを少し大人にしてくれる理不尽なお話です。
ある日の金曜日、中学生の池田了がいつものようにぼやきながら登校したその日のこと。
少し肌寒くなり、下校時間には赤い夕陽を見ることができるような季節ごろ、リップクリームを塗る女の子をよく見かけながら、ほんのちょっぴり好きなあの子(mtk...)に思いを馳せていた。
ようやくまじにだるい授業が終わった。煌びやかに終業のチャイムが鳴り響き、心躍らせながら帰宅の準備を手早く済ませる。