帰り道
その日の放課後、急に雨が降り出した。
天気予報は曇りで、傘は置いてきてしまった。しかも、委員会活動で帰りが遅くなってしまい、美穂ちゃんはもう帰ったあとだった。
ーー困ったなあ。
昇降口で空を見上げたが、まだまだ雨は止みそうになかった。
仕方がないから走って帰ろうかと思ったとき。
「二ノ宮さん」
後ろから声をかけられて振り返る。同じクラスの室井くんが立っていた。
「傘忘れたの?」室井くんが言った。
私は頷いた。
「よかったら一緒に帰る?同じ方向だよね」そう言って彼は、傘を広げて差し出してくれた。
同じ傘で一緒に帰る。
普通だったらどきどきしてしまうのだろうが、私はどきどきよりも緊張してしまった。
クラスの男の子とはほとんど話したことがない。私と一緒のところを見られてもいいのだろうか。傘を持ってもらっているけれど、迷惑に思っていないだろうか…など余計なことが気になって、ますます話せなくなっていた。
「…俺の家、兄弟多くてさ」室井くんがぽつり、と言った。「同い年だけど、二ノ宮さんが妹みたいに見えて、声をかけたんだ」
「妹がいるの…ですか?」
なんで敬語、と室井くんは笑ったあと答えてくれた。「5人兄弟で一番上に兄貴がいて、俺は二番目。下に2人妹がいて、一番下は弟なんだ」
そして彼は、家のことを話してくれた。
私は、最初の緊張が嘘のように、室井くんと楽しく話ができた。
家に着いたのは夜の7時過ぎだった。いつもなら尚人さんは帰っているのだけれど、その日はまだ帰ってきていなかった。
そして10時になっても、帰ってこなかった。




