正直な気持ち
次の月曜日からも、私は学校へ行った。しかし、なんだか藤本さんの様子が先週までと違った。先週は休み時間や移動教室など一緒にいてくれたのに、今日はこちらへ来てくれなかった。避けられているのだろうか。
その夜、尚人さんが帰ってきてから、相談した。
「…やっぱり俺のせいかな。変なこと言っちゃったし」
また尚人さんが落ち込んだように見えたので、私は慌てた。何か言おうとしたけれど、なんて言ったらいいかわからなかった。
「…エリカはどうしたい?藤本さんと友達でいたいか?」
「うん」
「だったら、正直に自分の気持ちを話さないとな。俺も経験あるんだけど…誰かに嫌われてるかな、って思っても自分の勘違いだったりするんだよ。やっぱり他の人の気持ちなんて想像だけじゃわからないから、話すことでしか、理解できないんだと思う」
「…うん」
少し緊張するけれど、明日藤本さんに話しかけよう。そう決めた。
次の日。学校に行って藤本さんに話しかけようとしたけれど、他のお友達と話したり、席にいなかったりで話しかけるチャンスを失っていた。
そして、あっという間に放課後になってしまった。
「藤本さん」
帰ろうとしていたところを後ろから呼び止める。彼女は振り向いた。
「あの…一緒に帰っていい?」
どう話を切り出していいかわからず、私はそれだけ言った。
ふたりで帰り道を歩く。藤本さんは何も言わなかった。
私は少し深呼吸して、勇気を出して言った。
「藤本さん…私のこと、嫌になっちゃった?」
「え?」
「昨日から、全然話してくれないから…避けられてるのかと思って…」
「違う、違うの。避けてるんじゃなくて…土曜日に、家庭の事情みたいのを聞いちゃったでしょう。それで…なんか、後ろめたくなっちゃって…。私は両親も普通にいるし、何も不自由なく過ごしているから…そんな私が近くにいたら傷つけちゃうかな、って考えたりして…」
「どうして?」私は驚く。「私、今とっても幸せなの。藤本さんは後ろめたく思う必要ないんだよ」
「……」
藤本さんはようやく笑って、私の頬を引っ張った。「尚人さんと出会えてよかったね」
「うん」私は答えた。とびきりの笑顔で。
いつも読んでくださる方、本当にありがとうございます。
これにてエリカ、学校へ行く編は終わりです。
次回以降も読んでいただけると嬉しいです。