友達2
紘海くんに少しだけ勉強を教えてもらって、あとはふたりでテレビを見たりしていた。そうして午後7時ころ、尚人さんが帰ってきた。
「おかえり」紘海くんが言う。
「…おかえりなさい」私も言う。こうやって言うことも、紘海くんが教えてくれた。
「ただいま、エリカ」尚人さんが笑顔で答える。「紘海…また夜メシ食ってくのか?来るなんて知らなかったから、ふたり分しか買ってないけど…」
「お、その言い方だと連絡すれば買ってきてくれるのか」
「後で請求するけどな」
結局、ふたつのお弁当を、ひとつは紘海くん、もうひとつを尚人さんと私が分けて食べた。食べ終わった後、私は今日、藤本さんが持ってきてくれたプリントを見せた。
「そうだ、尚人。今日エリカに友達が出来たんだぜ」
「え?」尚人さんはプリントから顔を上げる。
「友達…っていうのかな。今日初めて話したんだけど…」私は言った。
「俺が頼んどいた。エリカの面倒見てやってくれ、って」
「…余計なことを」尚人さんは呟いてから、私に向き直って言った。「また学校に、行ってみるか?」
「え…?」
「今日クラスの子と話ができた、っていうのは大きな進歩だろ。それに勉強したから、前よりは授業についていけるんじゃないか?…どうだ?」
私は考えた。尚人さんは私に、学校に行ってほしいのだろう。そして…藤本さん。彼女は学校にいる間なら一緒にいてくれる。
私は頷いた。
「そっか…偉いぞ」尚人さんは私の頭を撫でた。
「俺のことは褒めてくれないのかよ」紘海くんが言った。
「お前はエリカのこと考えて言ったのか?ただ女の子だからって声かけただけじゃねえの?」
「あっ、ひでえ!」
よく解らなかったけれど、ふたりの様子がなんだか面白くて、私は笑ってしまった。