表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透明人間  作者: 野良
13/28

友達

 初めて学校に行ってから、夜、尚人さんは私に勉強を教えてくれるようになった。

 文字を覚えて、本を読んだり、計算を覚えたりした。

 時々紘海くんも昼に来て、話をしたり、勉強を教えてくれたりした。

 そうして一か月が過ぎた。その間、私は学校へ行かなかった。


 呼鈴が鳴って、私は玄関に出た。私はその時、ひとりで勉強していて、机の上にドリルがあった。時刻は、午後4時くらいだ。

 ドアに向かいながら誰だろう、と考えた。紘海くんは絶対呼鈴なんて鳴らさないのだ。そうすると、宅配便の人かもしれない。

 しかし、ドアの向こうに立っていたのは、中学校の制服を着た、同い年くらいの女の子だった。


「ーーこれ」女の子が封筒を差し出す。「学校のプリント、持ってきた」

 私はおずおずと受け取る。同い年の女の子と話すのは、まだ苦手だった。

「せっかくここまで届けにきたのに、お礼の言葉もないわけ?」

 私は慌ててありがとう、と言った。

「いつ、学校に来れるの?」

「…わからない。尚人さんが無理に行かなくていい、って…」


 それを聞いたとき、正直ほっとした。あんな思いは二度としたくなかった。

 けれど尚人さんは、本当は私に学校に行ってもらいたい、と思ってるはずだ。だから行かなくちゃ、とは思う。


「尚人さんって…お父さんのこと?」女の子が言った。

 私は首を横に振った。

「じゃあ、お兄さん?」

 また首を振る。

「え?じゃあ…」

「よ、エリカ」聞き覚えのある声が割って入る。紘海くんだ。「…エリカの友達?」

「あ、はい!同じクラスの藤本美穂です!」少し緊張したように、藤本さんが言った。顔もなんだか赤い。

「じゃあ、悪いんだけどさ、こいつのこと頼んでいいかな」紘海くんが私を指差す。「なんせ、まだ小さい子供みたいな奴だから」

「わかりました。学校にいる時くらいなら…」藤本さんはそわそわして落ち着かない様子だった。「じゃあ、私、これで失礼します!」

 藤本さんは頭を下げて駆け出して行った。

「よかったな、友達ができて」紘海くんが部屋に入る。

「…今日、初めて話したんだけど…」

 それでも友達なのだろうか、と私は思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ