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皇女様の説得

元々僕達はマリーセン王国を追われ、リーラニア帝国に亡命するつもりだった。それを考えれば、リーラニア帝国の爵位を(たまわ)るというのは願ってもない話である。


ただ、僕としては、マリーセン王国を完全に捨てる気にはなっていない。いつの日か機会が訪れれば、マリーセン王国に戻って国王陛下を助け、摂政と対峙することを考えていた。リーラニア帝国に亡命するのは、一時的な退避だ。


もしここで爵位を受ければ、マリーセン王国に戻りにくくなってしまうのではないだろうか? 僕は口を開いた。


「あ、あの……」

「はい」

「その爵位ですが、御辞退申し上げるわけには参りませんでしょうか……?」


僕が尋ねると、シャルンガスタ皇女殿下は戸惑った様子で言った。


「ええっ? 何故でしょうか?」

「わたくしごときが皇女殿下や皇帝陛下をお助けできたのは、実力ではなく、ひとえに時の運によるものでございます。爵位など、身に余るというもの。この帝国に、しばし滞在することさえお許しいただければ……」

「……アシマ様は、我がリーラニア帝国を、まだ敵だとお思いですか?」

「ええっ?」


思いがけない皇女殿下の言葉に、今度は僕が戸惑った。


「そ、それはいかなる意味でしょうか……?」

「大功を立てたアシマ様に何の褒賞も出さなかったとなれば、我が帝国の威信は今度こそ地に墜ちます。皆、功を立てても報われぬと思うはず。これより後、誰一人帝国に忠義を尽くさなくなるでしょう。そうなれば、いずれ帝国は崩壊し、乱れた世の中に……」


そう言って、顔を曇らせる皇女殿下。僕は反論した。


「で、でも……この場合、褒賞を出されなかったのではなくて、こちらから辞退するのですから……」

「同じことです。アシマ様が爵位をお受けにならなければ、無理やり辞退させられたと噂する者が必ず現れます。世に広がった誤解を、どうやって解くことができるでしょうか?」

「…………」

「どうかわたくし共を助けると思って、爵位をお受けください!」


そう言うと、皇女殿下は僕の手を握ってきた。


「ううっ……」


確かに、皇女殿下の言うことももっともだった。やはり、単純な辞退は難しいか……


ひとまず、僕は頷いた。


「お話、良く分かりました。浅はかな発言をお許しください」

「ああ……」


承諾の意志を見せると、皇女殿下は顔を輝かせた。


「それで良いのです。アシマ様は帝国の諸侯として、父上の側近に取り立てられるでしょう。そして行く行くは、わたくしと結……」

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