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ドラゴンの治療

「GUOOO!」

「お帰り、バルマリク」


極大(トニトリア・)雷撃(マキシマグナ)を受けたとき、バルマリクが上げた煙は偽物だった。大きな怪我をしてもう飛べないように見せかけるため、あらかじめポルメーに水筒の水を飲ませておき、水煙を噴き上げさせたのだ。


とはいえ、バルマリクも僕と同じように雷の一部を喰らってはいた。その前から攻撃を受け続けていたこともあって、体のあちこち、特に翼や手足が焼け焦げている。


僕は立ち上がり、バルマリクの体を撫でながらマルグレーチェに言った。


「僕より先に、バルマリクの手当てをしてあげて」

「えっ、でも……」

「お願い」

「……これだけの怪我を治すと、結構時間かかるわよ?」


バルマリクの体を見回して、マルグレーチェが言う。僕は答えた。


「僕なら大丈夫。バルマリクが治るまで待ってられるよ。テイマーだからね」

「何よそれ……まあいいけど」


我ながら、筋が通っているのか通っていないのかよく分からない理屈だったが、ともかくマルグレーチェは納得してくれた。彼女は手に魔力を集中し、バルマリクの治療を始める。


「アシマ様……」


その間に、シャルンガスタ皇女殿下がハンカチを出して僕の顔を拭こうとした。マルグレーチェがそれを見て怒鳴る。


「ド素人が怪我人に触らないでください! 傷口が汚れて悪化します!」

「なっ……」


皇女殿下は、眉根に皺を寄せてマルグレーチェをにらみつけた。


「で、殿下……」

「あっ……」


僕が呼びかけると、皇女殿下はすぐに穏やかな表情に戻る。


「わたくしとしたことが……たかが卑賎な回復術師の言動に目くじらを立てるなんて、はしたないことを……」

「!?」


マルグレーチェは一瞬皇女殿下を見たが、何も言わずバルマリクの治療に戻る。やがてバルマリクの治療が終わり、僕も怪我を治してもらった。


その頃合いを見計らったように、軍人らしい人達が何人かこちらにやってくる。聞くと、皇帝陛下の計らいで、バルマリクを宮殿のドラゴン舎で預かってくれるとのことだった。


「感謝いたします」

「とんでもございません。アシマ殿とマルグレーチェ殿は、宮殿の客室へ……」


僕はマルグレーチェや皇女殿下と別れて、バルマリクをドラゴン舎に連れていった。その後、部屋に案内されるのかと思っていたら、侍女が現れてこう言った。


「申し訳ございません。お部屋に御案内する前に、湯浴みをしていただきたく……」

「あっ……」


そりゃそうだ。こんな薄汚れた風体で部屋に入れてもらえるわけがない。

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