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雷鳴術師、テイマーに斬られる

僕達を襲ったのは、今までとは比べ物にならない、大きな雷だった。


雷が落ちる直前、僕はバルマリクを大きく急旋回させ、サーガトルスから遠ざかるように回避しようとした。旋回が急過ぎたのでバルマリクの体は大きく横に傾き、僕はバランスを崩して落ちる。


「うわあああーっ!!」

「GUAAAA!!」


真っ逆さまに落ちていく僕。バルマリクも白い煙を上げ、くるくる回りながら僕とは別の方向に落ちていく。


「ハハハッ! 貴様はもっと手強いかと思っていたが、最後は他愛ないものだな!」


サーガトルスは僕を嘲笑(あざわら)いながら、宰相を吊るした教会へと飛んでいく。降下して尖塔のてっぺんに近づくと、宰相を見下ろして言った。


「宰相! 貴様に尋ねることがある!」

「あ、あ……」

「何を怯えている!? ん……?」


そのとき、ふと何かに気付いたサーガトルスは、後ろを振り返った。


「ばっ、馬鹿なっ!?」


驚愕に目を見開くサーガトルス。それはそうだろう。地上に落ちて死んだはずの僕が、すぐ後ろにいたのだから。


「くっ!」


さすが、リーラニア帝国最強の魔道士だけあって、サーガトルスの反応は速かった。魔法で攻撃するのは間に合わないとみてか、一旦上昇して僕から離れようとする。だが、停止した状態から加速するサーガトルスより、全速力で飛んできた僕の方が、今度は速かった。あっという間に追い付いた僕は、サーガトルスの腹部に衛兵の剣を突き刺す。


「でやあっ!」

「ぐわっ!」


抜き身の刃を、素手で握って抵抗するサーガトルス。そのせいで深くは刺さらなかった。まだ致命傷ではない。


「し、死ね! 大雷(トニトリア)……」


サーガトルスは、傷付きながらも反撃しようとする。僕は彼の魔法が放たれる前に、衛兵の剣を手放し腰から摂政の剣を抜いて、サーガトルスの喉を水平にかき斬った。


「あああああ!!」

「っ……」


呪文が止まり、サーガトルスの体から力が抜けていく。その体の表面に、小さな稲光が無数に走り始めた。魔法の構築を中断され、行き場のなくなった魔力が暴走を始めたのだ。


僕はサーガトルスから離れた。意識のなくなったサーガトルスには、もう魔力は制御できない。彼の体は宰相めがけて落ちていった。身の危険に気付いた宰相が悲鳴を上げる。


「ひいっ!? よ、よせ! 来るな! 来るな! ぐぎゃあああああああああああ!!」


サーガトルスの体が宰相にぶつかり、凄まじい稲光が辺りに散っていく。同時に宰相の断末魔の叫びが、帝都の空に響いたのだった。

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