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そして空中へ

シャルンガスタ皇女殿下の答えを聞いた僕は、大きく頷いて入口へと向かう。


「アシマ……」


マルグレーチェも、心配そうにこっちを見ていた。僕は彼女にも近づき、


「すぐ外に出られるように、準備をしておいて」


と告げる。マルグレーチェも頷いた。


僕の足の先には、ポルメーと衛兵の剣が一振り、付いたままだった。僕は摂政の剣を鞘にしまうと、衛兵の剣を手に持った。ポルメーは肩の上に止まらせる。


思えばさっきから、僕はポルメーをこき使ってばかりだった。謁見の間に入るときの霧吹きに始まって、護衛隊長の拷問と首の防御、さらには皇帝陛下を護るため、避雷具に変身と来た。本当だったら、とっくにばてていてもおかしくはない。


「本当にごめんね。あとちょっとだけ、付き合ってくれるかな?」

「PUUU!」


謝りながら撫でると、ポルメーは元気よく返事をした。


「ありがとう……」


サーガトルスが出ていった入口の扉は、半開きになったままだった。僕はそこを通って外に出る。もしかしたら、出てきたところを狙って不意打ちする作戦かも知れないので、警戒しながらだ。出てみると攻撃される気配はなく、近くにサーガトルスの姿もなかった。


「…………」


辺りには、衛兵達が何人か倒れていた。殺されてはいないようで、みんなビクビクと痙攣している。謁見の間の外を警備しているときに中からサーガトルスが出て来たので、止めようとして軽い雷を喰らったように思われた。


バチッ……


音がしたので振り向くと、入口の結界が復活していた。僕以外の者は、決着が付くまで逃がさないということだろう。


「どこだ……?」


改めてサーガトルスを探す。すると、廊下の窓が一つ開いているのに気付いた。その向こうを見ると、サーガトルスが失神した宰相を片手に飛んで行くところだ。どこまで行くのだろうか。


僕はポケットから笛を取り出した。ドラゴンにとって聞き取りやすい音を発する、専用の笛だ。宮殿の裏の森にいるバルマリクに確実に聞こえるよう、口笛ではなくこっちを使う。


笛を口に当てて、思いっきり息を吹き込んだ。プシューッという、人間の耳には何とも間抜けに聞こえる音が出る。


「GUOOO!!」


すぐに森の方から咆哮がした。僕は窓から身を乗り出して待つ。やがてバルマリクが窓の下に到着したので、その背中に飛び乗った。


「ようし、行くよ!」

「GUOOO!!」


もう一度吼えるバルマリク。僕達は空中に舞い上がり、サーガトルスを追った。

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