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さらなる暗雲

「…………」


皇帝陛下は何も言わず、ただ怒りをこらえているようだった。僕はさらに続ける。


「陛下。わたくしごとき亡命者の証言では、お疑いの方も多かろうと存じます。何卒、外務大臣閣下を御召喚の上、お話をお聞きくださいませ。外務大臣閣下のお話と、護衛隊長殿のお話が一致するかお確かめになれば、事の真偽は明白となりましょう」

「……テーゼラー卿は、いずこにおる?」

「カルデンヴァルト辺境伯の館でございます。その他の使節団の方々も、そちらに滞在されております。火急の事態ゆえ、皇女殿下お一人のみお連れ申し上げました」

「よし……使節団は一度、帰還といたそう。我が帝国がこの為体(ていたらく)では、マリーセンとの交渉もおぼつかぬ!」


皇帝陛下の言葉に、僕と数名の廷臣達が「「「御意!」」」と返事をした。宰相と外務大臣が国家への反逆を企てていたとあっては、しばらくまともな外交もできないだろう。マリーセンとは今の休戦を続けて、正式な講和は延期、といったところか。


僕は、宰相の様子をちらりと(うかが)った。


護衛隊長の証言に加えて、外務大臣も同じ証言をするだろうという予告。ここまで不利な状況となった今、果たして宰相はどう動くのだろうか。


「馬鹿な……」


宰相は一言吐き捨て、体を震わせていた。それを見て財務大臣が言う。


「その御様子では、どうやら、テーゼラー卿の召喚を待つまでもなさそうですな」

「セルウィッツ……」

「宰相閣下、いやガルハミラ侯爵。もはや言い逃れはできますまい。潔く、(ばく)()かれよ!」

「ぐっ! 陛下、お聞きください!」


なお抗弁しようとする宰相。皇帝陛下は宰相をキッとにらみ付けた。


「わたくしめの行いは、全て帝国を思ってのことでございます! 今、戦を止めてマリーセンと講和を結ぶは、国益を損ないまする! 三月の御猶予さえいただければ、必ずやカルデンヴァルトを……」

「黙れ! そのためにシャルンガスタの命を狙ったと申すか!?」

「陛下……」

「衛兵! この者を捕えて厳しく取り調べよ! 企みの全てを白状させるのだ!」

「「「御意!」」」


先程、護衛隊長を取り押さえに集まった衛兵達が、今度は宰相にとびかかろうとした。宰相は鋭く一声叫ぶ。


「控えい!」

「「「!」」」


衛兵達の動きが止まる。宰相は不気味に笑い出した。


「フッ、フフフフ……こうなってしまっては、致し方ありませぬな……」

「?」


不穏な気配を感じた僕は、護衛隊長にまとわりついていたポルメーを、こっそり呼んだ。

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