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皇帝の決断

「ううむ……」


いささか心が動いたのか、皇帝が唸る。そこへ宰相が声を荒らげた。


「話にならぬわ! 皇女殿下の御意思を踏みにじったのは、他ならぬマリーセンではないか! 残された我らがこれに報じずして何とする!」

「皇女殿下への襲撃が、マリーセン王国中枢の意志か、軍の一部による暴走かは、まだ分かりますまい! それを確かめてから事を起こしても、遅くはありませぬ!」

「どちらでも同じことよ! 仮に軍の一部による暴走だとしても、それを制止できなかった王国に責があるは当然であろうが!」


主戦派の筆頭である宰相と、和平派の重鎮である財務大臣の舌戦が続く。皇帝と廷臣達は、固唾を呑んでその行方を見守った。


「今から兵を出したとて、武器・兵糧(ひょうろう)三月(みつき)ともちませぬぞ!」

「その三月があれば、カルデンヴァルトを制圧できる!」

「お気は確かか!? 我が帝国軍が何年も攻め続けたにも関わらず、カルデンヴァルトは落ちなかったのですぞ! それがたったの三月で、どうして制圧できましょう? いたずらに兵を損なうのは、火を見るより明らかではございませぬか!」

「ハッ!」


宰相は財務大臣を嘲るように一声笑うと、こう問いかけた。


「セルウィッツ卿、今までカルデンヴァルトが落ちなかった理由を存じておるかな?」

「軍の作戦のことなれば、軍人にお尋ねを」

「我が軍が少数のマリーセン軍を下せず、カルデンヴァルトが落ちなかったのは、クナーセンなる敵将が巧みに防衛網を敷いていたゆえ。さらに、先般の大攻勢の折にはアシマ・ユーベックなる王宮テイマーが防衛に加わり、獣共を使って我が軍の行動を大いに阻害した」

「それが一体、どうしたというのです?」


財務大臣が尋ねる。そこで宰相は、皇帝の方に向き直って言った。


「陛下。クナーセン、並びにユーベックの両名は、我が智謀により、既にマリーセンの王宮から取り除いてございます」

「「「!?」」」


廷臣達がざわめき、皇帝も声を上げた。


「なんと……」

「マリーセンの有力者を買収し、王宮から追放させました。遺憾ながら先日の休戦には間に合いませんでしたが、今やクナーセンに軍の指揮権はなく、ユーベックも動けませぬ。今攻めれば、勝利は間違いないかと」

「…………」


少し考えてから、皇帝は宰相に尋ねた。


「必ず、勝てるか?」

「万一敗れた折には、いかなる罰もお受けいたします!」

「よし……」


皇帝が立ち上がりかけた、そのとき――


大きな音と共に、謁見の間の扉が開かれた。

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