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鳩首会議

「昨日に引き続き、むさ苦しい部屋で恐縮でございます」


僕達を応接間に案内した辺境伯は、シャルンガスタ皇女殿下に謙遜した。もちろん、内装や調度品は辺境伯の格式に則った、それなりのものだ。ただ、よく見るとあちこちに痛んだ箇所がある。修繕や買い替えの予算がないのだろう。


そして皇女殿下は、昨日もこの館に滞在したようだ。


さて、今この応接間にいるのは僕とクナーセン将軍にマルグレーチェ、皇女殿下と外務大臣、そして辺境伯とローグ・ガルソンだった。皇女殿下のお付きの人達は、別の部屋に控えてもらっている。


テーブルの上座に座る皇女殿下。残りのみんなも座ると、辺境伯が口火を切った。


「皇女殿下を襲った暗殺者、および逃亡したリーラニア兵は、目下、我がカルデンヴァルト軍が総力を挙げて探索してございます。しかしながら、今のところ手がかりが得られておりません……」


辺境伯は、少し顔を曇らせた。戦乱が続いたカルデンヴァルトは経済も疲弊していて、動かせる兵の数も少ない。警備隊長であるローグ・ガルソンが自ら現場で要人警護に当たっていたのも、そのせいだろう。そんな状態だから、探索が順調に進まなかったとしても無理のないことだった。


「そうですか……」


皇女殿下が辺境伯に応える。続いて僕が口を開いた。


「辺境伯閣下。このカルデンヴァルトに、再び災いが迫っております。クナーセン将軍のお話によれば、リーラニア兵が逃亡したのは、臆してのことではないとの(よし)。おそらくは、リーラニアの何者かが護衛兵を抱き込み、暗殺者を送り込んで皇女殿下を亡き者にし、講和を阻止せんとしたものと思われます」

「何ということだ……」


僕の話を聞いて、辺境伯は顔面蒼白になった。


「我がカルデンヴァルトは、先日の休戦を受けて復興の緒に就いたばかり。再び戦に巻き込まれることだけは、何としてでも避けなくてはならぬ。いかにすれば良いであろうか……」


そのとき、外務大臣が口を開いた。


「考え過ぎではないかな? 既に暗殺は阻止したのだ。我がリーラニア帝国の戦争継続派も、もはや手の打ちようはあるまい。このまま我らが王都まで赴き、講和条約に調印すればそれまでだ」

「恐れながら……外務大臣閣下に申し上げます」


僕は言った。馬車の中では反論しなかったが、僕はこのカルデンヴァルトを護った功労者の一人ということになっている。そのカルデンヴァルトの領主である辺境伯の前なら、多少の発言権はあるのだ。

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