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馬車の上から

ここで、外務大臣の意見に反対するのは簡単だ。だが、今の僕の扱いは、臨時の小間使いのようなもの。外務大臣とでは、発言の重みが違い過ぎる。


もう少し状況が動くまで、あえて外務大臣の顔を立てておくか……


それよりも、今の話をとっかかりにして、リーラニア帝国の内情が探れるかも知れない。

僕は言った。


「只今の外務大臣閣下のお言葉は、誠にごもっとも。皇女殿下のお命を狙った卑劣な輩が、どこの誰かは存じませんが、大方()()()()()()()でございましょう。殿下が脅しに屈せず王都に向かったと聞けば、慌てふためくに相違ありません」

「「「…………」」」


車内に沈黙が流れる。やがてシャルンガスタ皇女殿下が口を開いた。


「そのような、小物かどうか……」

「殿下」


たしなめようとした外務大臣に、皇女殿下は言う。


「良いのです。この期に及んで、隠し立てをする必要もないでしょう」

「賊を寄越した者に、心当たりがおありなのですか?」


僕が尋ねると皇女殿下は、「証拠は何もありませんが……」と前置きをして言った。


「リーラニアに、此度の講和を喜ばぬ者がいるのは事実です。その筆頭が、宰相のガルハミラ侯爵。宰相は一貫して、マリーセンとの戦を主導してきました。多額の国費を費やしながら、その戦で成果を上げられず、宰相は父帝陛下の信任を失いつつあるのです。正式に講和が成れば、おそらく罷免されることになるでしょう」

「…………」


僕は、黙って皇女殿下の話を聞いていた。

そういう事情なら、確かに暗殺者を送ってきそうではある。宰相本人が関わっていなくても、宰相が失脚して困る誰かが動いた可能性もあるだろう。皇女殿下に付く護衛兵を抱き込めるぐらい、地位と権力のある誰かが。


暗殺が失敗して、その人物は次にどう動くだろうか? 今はまだ分からない。分からないが……


とりあえず、やるか。


僕は屋根の上のポルメーに、テイムの魔法で合図を送った。すぐにポルメーは、激しく鳴き始める。


「PUUU!! PUUU!!」

「止めなさい!」


それを聞いた皇女殿下が御者に命じ、馬車が止まる。皇女殿下は不安げな顔で僕に尋ねてきた。


「アシマ様。今のはスライムの声では? 一体どうしたのでしょう?」

「お待ちください。見て参ります」


馬車の外に出た僕は、屋根の上を見上げて少し待つ。そしてポルメーを、僕の手の上に飛び降りさせてから馬車の中に戻った。


「アシマ様……?」

「申し訳ございません!」


僕は、馬車の床に跪いた。

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