大土木事業
~主人公Side~
クナーセン将軍の屋敷で、摂政の軍勢とフォリウスを破ってから一晩過ぎた翌朝、僕達は王都の東にある町、ジャールントに到着していた。
フォリウスを倒した後、僕達はすぐに将軍の屋敷を出た。そして、城壁の内側に隣接する家屋の中から空き家を探し出し、一度入った。
東門を襲って警備兵を追い散らせば、僕達がそこから出て行ったかも知れないと摂政は考えるだろう。そうなれば、人数を割いて王都の外を捜索しないわけにはいかない。残った少ない兵士で僕達を見つけて捕まえようとしても、また返り討ちにされるのが落ちだから、王都の外の捜索が終わるまで王都の中はほったらかしになる可能性が高いと僕は思った。
だから、王都の外の捜索が終わるまでに脱出路を確保する。そうみんなに説明すると、マルグレーチェは僕の作業を手伝うと言い出した。
「いや、お嬢様にそんな泥臭いことをさせるわけには……」
「生きるか死ぬかの瀬戸際なのよ! そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「ううう……」
物凄い勢いでキレられ、僕が困っていると、将軍が口を挟む。
「アシマよ、マルグレーチェを連れて行ってやってくれ。この子は言い出したら聞かん」
「は、はい……」
そして僕はバルマリクに乗り、東の門に行って警備兵に炎を吐きかけまくった。将軍や屋敷の人達にも来てもらって、少し離れたところから逃げる警備兵達に顔見せしておく。
一度着陸してマルグレーチェを後ろに乗せた僕は、東の森を目指して飛び立った。残りのみんなは、目立たないよう少人数ずつに分かれて例の空き家に撤収だ。
東の森に到着した僕は、野生のイノシシ数十頭と、さらに多数のモグラをテイムした。モグラを数頭のイノシシの背中に分乗させ、城壁の外側まで走らせる。モグラはそこで地面に降り、空き家に向かって穴を掘り始めるのである。
城壁の基礎を避け、下をくぐるように掘り進める。空き家では、みんなに頼んで庭に縦穴を掘ってもらっていた。その縦穴とモグラの穴がつながったら、後はどんどん広げていく。掘って出た土は、城壁の外に盛ると見つかりそうなので、全部空き家の建物の陰に積み上げた。
一方、森に残った僕達は、ある程度太い木の枝を払って適当な長さに切り揃えていた。そしてバルマリクの炎で炙り、アーチ状に曲げていく。少し離れた場所では兵士達が捜索をしていたので、時折イノシシを突っ込ませて邪魔をし、捜索が長引くように仕向けた。




