遠い、遠い敵
地面には、クナーセン将軍に倒された敵兵の剣が落ちている。僕はその剣を拾うと、フォリウスめがけて突進した。
「でやあっ!」
「フッ……獣使いが剣士の真似か」
フォリウスは僕の方に左手をかざし、氷の塊を一つ飛ばしてきた。僕はそれを剣で弾き飛ばす。ところが、その途端、剣は鍔元から折れてしまった。摂政の剣ほど質が良くないのだ。
「ああっ……」
「アシマ! これを使え!」
将軍の声と共に、僕の横の地面に摂政の剣が突き立った。苦しい息の下で投げてくれたのだ。
僕は剣を拾うと、もう一度フォリウスに向かって行こうとした。だが、その間にもバルマリクの炎は、フォリウスの吹雪に押し負けそうになっている。
「バルマリク!」
僕が呼びかけると、バルマリクは炎を吐くのを中断した。一度空に飛び上がって吹雪を避けると、僕の隣に着地する。特級魔道士の氷魔法、何て威力だ。
「…………」
ちらりと後方を窺う。剣を僕に託したということは、将軍はもう戦える状態ではないのだろう。だったら、僕が何とかするしかない。
僕は、使用人達に叫んだ。
「将軍を中へ! みんなも!」
「し、しかし……」
「急いで!」
重ねて言うと、使用人達が屋敷に引っ込んでいくのが気配で分かった。屋敷の中にはマルグレーチェがいる。将軍の手当は任せておいて大丈夫だ。
僕は、改めてフォリウスと対峙した。
「一対一だと? 私こそなめられたものだな」
「なめてるかどうか、すぐ分かるよ」
先程のフォリウスの言葉を鸚鵡返しする。フォリウスは頷いて言った。
「良かろう。まずはお前から始末してやる。来い!」
「行くぞ!」
剣を振りかざし、フォリウスとの間合いを詰めに行く。ここまで見た限り、相手は遠距離からの攻撃を得意としている。武器が届く距離まで近づければ、僕にも勝機があるかも知れない。
「全凍冷気砲!」
フォリウスは飛び退きつつ吹雪の魔法を放った。僕は横に跳んで避ける。間合いは詰められなかった。無理に突っ込んでも、十分近づく前に、吹雪を避け切れなくなって喰らってしまうだろう。
「くっ……」
「フ……お前は私には近づけぬ。遠くで私の氷魔法の餌食になるのみだ」
余裕の笑みを浮かべるフォリウス。やはり、接近戦は嫌うようだ。
それなら、あれで行くか……
僕はバルマリクに近寄り、あることを指示した。
「使い魔と悪だくみか? そのドラゴンを差し向けても私は倒せぬぞ」
うん。間違いない。内心で頷く。
でも、それでも……
お前は、僕に倒される。
※読者の皆様へのお知らせ
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
昨日タイトル変更を行ったところ、PVが半分近くにまで落ち込んだため、再度、以下のタイトルに変更することにいたしました。
【千字ラノベ実験投稿】失職テイマー大暴れ~王都を追放されたので使い魔ごと敵国に亡命しようと思います。破滅してから追放したのを後悔しても手遅れですよ~
読者の皆様には御不便をおかけしますが、なにとぞ御了承いただきたいと思います。
引き続き、よろしくお願い申し上げます。




