西部方面軍、必死の隠蔽
神獣の発掘を少しでも妨害するため、僕は近衛竜騎士団、それに王宮獣舎のドラゴンの全部を攻撃に参加させることにした。みんなに見送られて、僕達はバワーツ砦を飛び立つ。空中に上がった僕達は、北に向かいながら陣形を組んだ。
王宮獣舎のドラゴンが、まず陣形の中心になる。そのドラゴン達には油を詰めた樽を持たせていた。現地に着いたら火種と共に投げ込み、作業員を追い払うことで発掘を一時中断させるのだ。一回だけだと少しの時間しか作業を止めさせることはできないけど、何度も繰り返して攻撃することで、それなりの時間を稼げるだろうと僕は考えていた。
そして近衛竜騎士団は、王宮獣舎のドラゴン達の前後、左右、そして上下に位置して警戒する。西部方面軍に竜騎士隊は残っていないはずだけど、どこからか新しく竜騎士を連れて来る可能性がないとは言えない。どこからか襲われたとしてもいち早く発見して迎え撃てるように、備えておく必要があった。
「全隊上昇!」
「「「おおーっ!」」」
陣形を組み終えた攻撃隊は、僕の指示で高度を上げていった。西部方面軍は確実に、僕達が発掘の妨害に来ることを予測している。現地には、多数の弓兵や攻撃魔法の魔道士が配置されているはずだった。なので、彼らの射程より高いところを飛んで、安全に攻撃するのだ。
途中、西部方面軍の占拠する砦が下に見える。砦からは狼煙が上がっていた。僕達が飛んでいるのを見つけたので、発掘現場に知らせようとしているのだろう。残念ながら日のあるうちは、西部方面軍に気付かれずに現地へ近づくことは難しい。狼煙を上げている砦を放置して、僕達は北上を続けた。
そろそろ到着かとなった頃、僕は地図で確認した山を探そうとした。そのとき、一人の竜騎士団員が叫ぶ。
「団長、あれを!」
「!?」
団員の指差す方を見ると、少し遠くにある山のふもと辺りから朦々と煙が上がっているところだった。その周りの地形を見渡すと、間違いない、あれが神獣の封印されている山だ。
「団長……」
「行ってみよう」
「「「はっ!」」」
僕達は向きを変えて、その山を目指した。近づいてみると、山のふもとの広い範囲を覆い隠すように濃密な煙幕が張られている。
「なるほど……」
僕達の攻撃を防げないと見て、発掘場所の正確な位置を悟らせない策に出たわけか。あんなことをしたら地上にいる人達は煙くて仕方がないだろうに、何としてでも西部方面軍は発掘作業を続けたいようだ。
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。




