いざ発掘の妨害へ
長らくお待たせして申し訳ありません。
投稿します。
「西部方面軍の動き、もしかすると、ただの虚仮脅しではないかも知れません」
「どういうことじゃ? アシマ」
「実は、昨日戻ってきたテーゼラー卿の随行員が……」
僕は、クナーセン将軍を始めとするみんなに、随行員が語ったことを聞かせた。
「なるほどのう……西部方面軍がテイマーを集めておったと」
「そうです。そのときは誠の話か分からなかったので、皆様への報告は控えていました。申し訳ありません」
「うむ……しかしながら、カルデンヴァルトに伝わる神獣の伝承が誠であり、西部方面軍がその封印場所を掘り起こしているとなれば、あながち嘘とも決めつけられぬか……」
「仰せの通りです。ギーブル伯爵が誠に神獣を蘇らせ、テイマー達に操らせようとしている可能性もあるように思えます。もちろん、発掘から随行員の投降まで全部ひっくるめて、我々をカルデンヴァルト北に誘き出さんとする、ギーブル伯爵の策略ということもあり得ますが……」
「そうじゃな。今の時点では、全ての可能性を考慮しておかねばならん」
将軍が頷く。僕は続けた。
「いずれにしましても、捨ててはおけません。神獣が味方につくという話が広まり、今頃西部方面軍の士気は持ち直しているはず。発掘を完全には止められないとしても、何度か妨害をすれば、多少は敵方の気持ちもぐらつくかと思います」
「行ってくれるか、アシマ……」
「はい。我々なら、何かあってもすぐに逃げられますので。デーグルッヘ!」
「はっ!」
「神獣の発掘場所に強襲をかける。急いでみんなを集めるんだ」
「承知しました!」
続けて僕は、発掘現場を見て来た竜騎士に言った。
「すぐにシャドガン砦に飛んでほしい。とりあえず、今分かっていることだけでいい。ゾンドルム将軍に伝えるんだ」
「御意!」
竜騎士達は慌ただしく部屋から出ていった。僕も辺境伯や将軍に礼をしてから部屋を出る。シャルンガスタ皇女殿下とマルグレーチェも一緒についてきた。
「アシマ様……本当に向かわれるのですか? 危険なのでは……」
「確かに危険ではあります。西部方面軍は我々に発見されたことを知っています。そして真っ先に竜騎士団が妨害に来ることも先刻承知のはず。当然、それなりの備えをしているかと」
「…………」
「ですが、御安心ください。どうしても近づけぬとなれば、無理はいたしませんので」
「本当ね? 絶対に無茶はしないでよ?」
「大丈夫。心配しないで」
念を押すマルグレーチェに、僕は頷いて見せた。




