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穴掘る西部方面軍

あくる日の朝。


僕とシャルンガスタ皇女殿下、マルグレーチェ、それにデーグルッヘの四人で竜騎将軍府にいると、今度は団員が二人駆け込んできて(ひざまず)いた。


「申し上げます! 北方にて、西部方面軍に不穏の動きが……」

「と言うと?」

「とある山のふもとにて兵士達に道具を持たせ、地面に穴を掘らせておりました」

「地面に穴を……」

「近づいてよく確認しようとしたところ、林より伏兵が現れ、矢を射かけて参りました。それ(ゆえ)近づくに近づけず、報告のために帰還した次第」

「そうか……御苦労だった。矢を射かけてきたということは、こっちに知られたくないことをしてるみたいだね。それで、どの山だったのかな?」

「はっ……この山のこの辺りでございます」


一人が立ち上がり、壁に貼られていた地図の一点を指差す。そこはほとんど、カルデンヴァルトの北端に近い場所だった。


「うーん……」


僕は考え込む。その場所に何かが埋まっているという話は聞いたことがなかった。西部方面軍は何を掘っているんだろうか。


「お墓でも荒らしてるのかしら?」

「あるいは、財宝でも埋まっておるのやも知れませんな」


マルグレーチェとデーグルッヘが続けて言う。確かに、どちらもありえそうだ。


「アシマ様、どういたしましょうか……?」

「そうですね……」


皇女殿下に(たず)ねられ、僕はまた考えた。


その場所に何があるかは、辺境伯に聞くのが一番手っ取り早い。ただ、お墓なり財宝なり、辺境伯家にとって大事なものがそこにあったとき、西部方面軍の手が伸びていると知って辺境伯が動揺するのが怖かった。万に一つもないとは思うけど、西部方面軍を妨害しようと無理に兵を砦から出したりしたら、西部方面軍にその隙を突かれて、せっかく築いてきた優位が崩れてしまう。


しばらく黙った後、僕は口を開いた。


「マルグレーチェ。クナーセン将軍を呼んできてくれないかな? 将軍の意見を聞きたいんだ」

「分かったわ!」


クナーセン将軍は、僕よりもずっとカルデンヴァルトに詳しい。将軍に聞いてみたら、何か分かるかも知れないと思った。


部屋を出たマルグレーチェは、すぐにクナーセン将軍を連れて戻ってきた。僕は立ち上がって将軍を迎える。


「将軍、お呼び立てして申し訳ありません。内密にお伺いしたいことがございまして」

「儂なら一向に構わぬぞ。しかし、内密とはまた穏やかではないのう。どうしたのじゃ?」

「はい。実は……」


僕は将軍に、団員の見たものを話して聞かせた。

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