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嘘でも本当でも

随行員は、さらに話を続けた。


「将軍に敗れた直後、西部方面軍は司令部を放棄し、そこにいた人員は夜の間に北へ向かいました。魔道士の件、もしや重大なことなのではと思い、これだけは将軍のお耳に入れようと、移動のどさくさに紛れて抜け出してきた次第でございます!」


言い終えて平伏する随行員。僕は(たず)ねた。


「その魔道士の話、間違いないだろうね? もしも嘘だったら、皇帝陛下の御裁断を待たずに僕がお前を斬る。訂正するなら今のうちだよ?」

「決して嘘偽りはございません! 万が一事実と相違あらば、どうか将軍の手で存分に!」


脅しをかけられても、随行員の主張は変わらなかった。今のところ、これ以上聞き出せることはないみたいだ。


「分かった……もし本当だったら、知らせてくれた功績を皇帝陛下に上奏しよう。それと、戦が終わるまではこの砦にいてもらうけど、我慢してほしい」

「ははーっ!」


また平伏する随行員。僕は団員をやって警備隊長のローグ・ガルソンに来てもらい、随行員を引き渡した。


「それではガルソン殿、よろしくお願いします」

「お任せを。また何かありましたら、お呼びください」


ローグ・ガルソンと配下の兵士達が、随行員を引っ立てて部屋の外に出ていく。彼らの姿が見えなくなったところで、シャルンガスタ皇女殿下が口を開いた。


「アシマ様……あの者の話、誠だと思われますか……?」

「面目ございません。あれだけでは何とも……」


僕は首を横に振った。西部方面軍が本当にテイマーを十名前後集めているのか、それとも随行員を使ってそういう偽情報を流し、僕達を(おとしい)れようとしているのか、今はまだ判断できない。


「ただ……嘘にしろ本当にしろ、西部方面軍が何かを企んでいるのは間違いありません」

「やはり、そうなのですね……」

「はい。さらに申し上げると、あの思い切りの良いギーブル伯爵のことです。負けを先延ばしにするだけの、中途半端な策ではないように思えます。もしかしたら戦局を逆転させる、起死回生の一手かも」

「「「…………」」」


部屋にいる全員に緊張が走る。先ほどまでの和やかな雰囲気は、もう無かった。続けて僕は、団員達に告げる。


「西部方面軍が僕達にどんな謀略を仕掛ける気なのか、今はまだ分からない。引き続き、カルデンヴァルトとその周辺の監視を行うように。少しでも怪しい動きがあったら、すぐに知らせるんだ」

「「「ははっ!」」」


団員達は一斉に頭を下げ、立ち上がって退室した。

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