随行員の証言
しばらくして、両手を背中で縛られた随行員が二人の団員に連れられて入ってきた。部屋の中ほどまで歩き、そこで跪く。
「シャルンガスタ皇女殿下、並びにアシマ将軍に拝謁いたします」
「聞いたよ。わざわざ戻ってきて、うちの団員に投降したそうだね」
「その通りでございます。申し訳ありません、将軍!」
「と言うと?」
「他の二人が、マリーセン軍の誠の数を西部方面軍に漏らしてしまいました!」
知ってる。そのつもりで解放したんだから。むしろ、漏らしてくれないと困るところだった。
「わたくしには事前に何の相談もなく、二人がギーブル伯爵の前で話し出しました。慌てて止めようと思いましたが、すでに手の打ちようがなく……お詫びのしようもありません!」
「しらじらしいことを!」
脇に控えるデーグルッヘが、随行員を叱りつけた。
「一度は西部方面軍に与したものの、もはや勝機がないと悟り、慌てて命乞いに参ったのであろう。さように虫の良い話が通ると思うのか!?」
「…………」
「言っておく。貴様らの裏切りなど、団長はとうの昔にお見通しであった。伝えたマリーセン軍の数は偽り。貴様らは西部方面軍を陥れるための、駒に過ぎなかったということよ!」
「まあまあ」
僕はデーグルッヘをなだめ、随行員に言った。
「わざと間違った話を伝えたのは悪かった。でも、三人もいたら一人ぐらいは裏切ってもおかしくないからね。本当のことは言えなかったんだ」
「将軍……」
「前にも言った通り、お前達の処分は皇帝陛下がお決めになられる。ギーブル伯爵の前で黙っていたのが本当なら、命だけはお助けになるかも知れない。このままここで待つんだね。西部方面軍が、もうじき鎮圧されるから」
「誠にその通りになれば、祝着なのですが……」
「えっ……?」
「西部方面軍の司令部にて、怪しきものを目にいたしました」
「怪しきもの……?」
「十名近い魔道士風の者が、兵士に護送されて司令部へやってきたのでございます。彼らが話すのを遠くより聞いたところ、リーラニア帝国全土からギーブル伯爵によって集められたとのこと。また、それぞれが犬や鳥を従えておりました」
「!」
僕ははっとした。犬や鳥を従えた魔道士、それはつまり、僕と同じテイマーということだ。
「他に何か、分かったことはある?」
「それが……何か良からぬ企てでもあるのかと思い、周りの兵士から聞き出そうといたしましたが、誰も詳しいことは知らぬようでした」
「そうか……」




