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戻ってきた随行員

結局、僕の右隣りにシャルンガスタ皇女殿下が座り、左隣にマルグレーチェが座ることになった。殿下は不満そうだけど、マルグレーチェが皇帝陛下の許しを得て従軍しているという事実には勝てないようだ。


それはいいとして、少し狭苦しい。皇女殿下とマルグレーチェが、僕とほとんど密着するぐらいの場所に椅子を置いて座っているのだ。


「あのう……(ちこ)うございませんか?」

「いいえ、アシマ様。これぐらいが普通かと」

「そうよ」

「…………」


二人に押し切られ、僕は黙った。そして定期的に集まって会議をすることを決め、その場は解散する。部屋には僕とデーグルッヘだけが残った。


「ふうっ……」

「はっはっ。団長は女子(おなご)からも人気でいらっしゃいますな。(うらや)ましゅうございますぞ」

「あはは……」


からかってくるデーグルッヘに、僕は苦笑いするしかなかった。


 ☆


その後、僕は竜騎将軍府で団員達からの報告を受け取った。といっても、戦闘が止んでいるので大した話はない。皇帝軍の本隊が順調にカルデンヴァルトに近づきつつあることや、シャドガン砦にいるゾンドルム将軍からの、特に異常はないという連絡ぐらいだ。本隊が到着してからの攻撃の手筈は、既に打ち合わせ済だった。


団員が集まっての会議も、どこか(なご)やかな雰囲気で進む。


「メリゴサ(とりで)から少数の敵軍が出て、北に向かったとの由にございます」

「また脱走であろう。主力のいる北側の砦からも、とうとう逃げ出す者が現れたか」

「こうまで脱走者が相次いでは、西部方面軍も戦うどころではありませぬな」

「まさに。反乱の鎮圧は近い。首尾よくギーブル伯を討った暁には、我ら、皇帝陛下よりお褒めの言葉を賜れようぞ」

「団長の陞爵(しょうしゃく)も、間違いありますまい」


笑い声が部屋の中に満ちる。そのとき、部屋の中に一人の団員が駆け込んできて(ひざまず)いた。


「団長に申し上げます!」

「どうしたの?」

「外務大臣テーゼラー卿の随行員が一人、戻って参りました」

「何だって……」


テーゼラー卿の随行員達は、前に僕が偽情報を与えて西部方面軍に放っていた。そのうちの一人が帰ってきたのか。思いがけないことを聞き、僕は驚く。団員達もざわめいた。


「偵察の途中、山中で一人手を振っているのを見つけ、捕縛して連行いたしました。今は見張りを付け、竜舎につないでおります。お会いになられますか?」

「そうだね……会ってみよう。ここに連れて来るんだ」

「御意!」


団員は立ち上がり、小走りで外へ去っていった。

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