竜騎将軍府
また間が開いて申し訳ありません。
更新します。
(主人公Side)
皇帝陛下の書状をカルデンヴァルトの各砦に届けた後、僕達近衛竜騎士団は休養に入った。ときどき団員をカルデンヴァルトやその周辺の偵察に送り出す以外は、バワーツ砦で待機して動かずにいる。
もうすぐ、皇帝軍の本隊がカルデンヴァルトに到着する。各砦への攻城戦が始まれば、また援護のために働くことになるだろう。そのときに備えて、団員達には英気を養わせていた。
そんなあるとき。ドラゴン達に餌をやって戻ろうとすると、副長のデーグルッヘが待っていた。
「団長。恐れ入りますが、こちらへ……」
「?」
言われるままついていくと、ある部屋の前に連れてこられた。その入口には“竜騎将軍府”という大仰な看板がかかっている。
「ここは……?」
「団長の陣営です。手狭ではございますが、ありあわせの物で設けました。今後はここから指揮を取っていただきたく」
「そんな大袈裟なもの、わざわざ設けなくても……」
「お言葉ではございますが、団長はリーラニア帝国の将軍にして皇室魔道士。その格式はマリーセンの将軍や辺境伯に劣るものではありません。雑兵が寝起きするような部屋でいつまでも軍務に就かれていては、帝国の体面に関わります。どうか……」
「…………」
もしかしたらデーグルッヘ達は、僕がクナーセン将軍や辺境伯にぺこぺこしているのが気に入らないのかも知れない。そんな風に感じた。戦の最中にマリーセン側の人達から反感を持たれるのは困るから、あまり出しゃばったことはしたくないんだけど……
とはいえ、団員達の気持ちを無下に扱うこともできない。僕は頷いた。
「分かった……でも、あんまり目立ったことはしないようにね。ここはマリーセン領の砦で、僕達は場所を借りてるだけだから」
「心得ております。さあ、どうぞ……」
入口から中を見てみると、奥に机が置かれていた。あれが僕の席だろう。部屋の両側には、主な団員が椅子を並べて座っている。僕が入ると、団員達は一斉に立ち上がった。
「団長をお迎えいたします!」
「「「お迎えいたします!」」」
唱和の声が響く中、一人が奥の席の椅子を引く。僕がそこに座ると、デーグルッヘはその脇にある、小さな机の椅子の前に立った。
「みんな、陣営の設置ご苦労様。さあ座って」
「「「ありがとうございます!」」」
着席する団員達。さて、何かもっともらしいことでも言わないといけないか。そう思ったとき、入口からシャルンガスタ皇女殿下が入ってきた。




