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西部方面軍司令官、最後の秘策

参謀ファルテン子爵が、恐る恐る尋ねる。


「司令官閣下……今、秘策と(おお)せられましたか?」

「うむ……この手はなるべく使いたくはなかったのだがな。事ここに至ってはやむを得ぬ」

「して、その秘策とはどのような……?」

「ファルテンよ。前に神獣の話をしたのを覚えておるか?」

「記憶しております。カルデンヴァルトに伝わる神獣の伝承は、ただのおとぎ話ではないと……」

「その通りだ。神獣は実在する。今では伝える者も少なかろうが、遠い昔、神獣はこの地に現れた。そして現在のリーラニア、マリーセン両国にまたがる地域を荒らし回り、甚大な被害をもたらしたのだ。名だたる戦士、魔道士もこれを止めることはできなかったと言われておる」


急に昔話を始めるギーブル。ファルテン達は呆気に取られた。


「閣下、そのお話と今回の戦に、何か関係が?」

「うむ。暴虐の限りを尽くした神獣であったが、最後にはとある大魔道士によって封印された。その封印された場所こそ、カルデンヴァルトの北端。つまり、今我らがおるこのメリゴサ砦からも遠からぬところに、神獣は眠っておるのだ」

「何と!?」


驚愕するファルテン。西部方面軍の幹部達もざわめいた。


「誠でございますか? 神獣が封印されているなどとは、初めてお伺いしました」

「私も初耳でございます」

「私も……」


彼らが怪しむのも無理はなかった。西部方面軍はここ数年、カルデンヴァルトの占領を目指して戦ってきた。当然、カルデンヴァルトの地勢や産物については事前に入念な調査が行われている。神獣と呼ばれるほど強力な魔獣が存在するなら、彼らが見落とすことは考えにくかったのである。


ギーブルは説明する。


「神獣の封印場所は、我が家に代々伝わる秘事であった。(ゆえ)に、そなた達といえども安易には明かせなかったのだ。許せ」

「はっ……して、もしや閣下はその神獣を(よみがえ)らせると?」

「いかにも。神獣の力は竜などの比ではない。皇帝軍の奴らに差し向ければ、戦局の逆転など造作もないことよ」

「「「…………」」」


あまりにも突飛な話であった。幹部達が一様に黙り込む中、一人ラグハスが異を唱える。


「お言葉ですが……神獣などを頼みにして良いものでしょうか? 仮に蘇らせたとして、司令官閣下の御命令に従うかどうか……」

「案ずるでない! 神獣を従わせる手筈は既に整っておる! これより我らは封印の地に向かい、神獣の発掘を行うのだ!」


ギーブルは胸を張り、ラグハスの疑念を一蹴した。

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