シャドガン砦の決戦
目的地に着いた僕達は、夜の間に普通の高さを飛んで、皇帝軍本隊のところに戻った。
後は、同じことの繰り返しだった。昼は低空飛行で兵士達を運び、夜の間に戻る。そうやって往復を続け、先遣隊の全員をギーブル伯爵領近くまで運んだ。
そして、国王陛下の軍勢がカルデンヴァルトに到着する前の日――
僕達竜騎士団と皇帝軍先遣隊は夜の間にギーブル伯爵領に入り、間道を通ってカルデンヴァルトを目指した。隊列の周囲にはフクロウを飛ばして警戒させる。ギーブル伯爵も皇帝軍の接近は警戒していて、見張りの兵士を自分の領地に残していたけど、隊列に近づいた敵兵はことごとくフクロウに始末された。
夜明け前にカルデンヴァルト入りした僕達は、山中に潜伏する。そして、シャドガン砦から敵の大半が出ていったのを見計らい、クナーセン将軍率いる辺境伯軍と共に砦に迫ったのである。
降伏勧告はすぐに拒絶され、僕達は攻撃を開始した。砦に残った守備兵達も攻撃は覚悟していたようで、落ち着いて防戦してくる。さらに狼煙を上げて、救援を呼ぼうとした。そこへドラゴンに水を入れた樽を落とさせ、火を消して狼煙を上げられなくした。
孤立無援のまま、守備兵は戦い続けた。だが、こちらの兵力は相手の5倍いた上に、元々はクナーセン将軍が築いた砦だ。どこをどう攻めれば脆いかは分かっていて、味方は次々に城内へと進入していく。最後に王宮獣舎のドラゴンが体当たりで城門を破ると、勝ち目がないと悟った守備兵は投降したのだった。
そして、皇帝軍先遣隊はシャドガン砦に入り、クナーセン将軍の辺境伯軍は近くの林に潜んで、戻ってくる西部方面軍を待ち受けた――
☆
「ええい、怯むな! 数は我が方が多い! 落ち着け! 落ち着いて迎え撃つのだ!」
ギーブル伯爵は、必死に檄を飛ばしていた。確かに、多くの兵を別の砦の守備に向かわせたとはいえ、数自体は僕達より西部方面軍の方がまだ多い。しかし、前後を辺境伯軍と皇帝軍先遣隊に挟まれた西部方面軍の兵士達は、明らかに浮足立っていた。
僕は城壁の上から砦の内側に降り、待機していた竜騎士団員達を見回して言った。
「みんな、ここまでよくやってくれた……いよいよ作戦の仕上げだ」
「はっ。団長、御命令を!」
副長のデーグルッヘが応える。他の団員達も頷いた。
「よし……出撃だ! 西部方面軍の主力を討つぞ!」
「「「オオ!」」」
力強く叫ぶ団員達。そして僕達はドラゴンに跨り、空へと舞い上がった。




