ドラゴン低空飛行
ゾンドルム将軍は、早速先遣隊の編成に取りかかった。その間、竜騎士団員やドラゴン達には休んでもらい、僕自身はバルマリクに乗ってある場所に向かう。その場所とは、リーラニア帝国内でスライムが繁殖しているところだ。
多数のスライムをテイムしてゾンドルム将軍の元に戻ると、数千の兵士達が整列して待機していた。
「ユーベック殿! 5千の精鋭を選び申した! いつでも動けるぞ!」
「ありがとうございます。今日は進軍を続行の上、夜はお休みください。明日の朝、竜に乗って出発いたします」
「承知した」
そして翌朝早く、改めて整列した先遣隊とゾンドルム将軍の前に立ち、僕は言った。
「先遣隊の兵士達には、6百ずつに分かれて竜に乗ってもらいます。我々は1日に1往復し、9日かけてカルデンヴァルト近くの集結地点まで運びます」
「6百とな……見たところ、ユーベック殿の竜は百頭程度のようだが、完全武装の兵を一度に6百も運べるのか?」
ゾンドルム将軍の心配も当然だった。リーラニア帝国のドラゴンは普通、完全武装の兵士を3人ぐらいしか乗せられない。しかも竜騎士が駆って飛ばすわけだから、運べるのは実質2人だ。マリーセン王宮から連れて来たドラゴンは少し大きめで、僕がテイムしているから御者を乗せる必要もないが、それでも兵士を4人運べればいい方である。バルマリクでも5人程度か。
つまり一度に運べるのは、竜騎士団の50頭とマリーセン王宮の50頭で、合計3百人弱ということになる。
ただしそれは、普通に飛んだときの話だ。普通の倍以上の兵士達を運ぶため、僕は少々危険な飛び方をする気でいた。
「お疑いはごもっともです。ですが、地表近くを飛ぶことで、通常の倍の兵士を運ぶことができるのです」
「地表付近を……それだけで?」
「それだけです。西部方面軍のギーブル伯爵は、長年竜騎士を使っています。我々が竜で兵士を運ぶことは予想していることでしょう。ですので、ただ先遣隊を派遣しても対処されてしまいます。相手の予想する以上の数の兵士を運んでこそ、意表を突けるのです」
「ううむ……」
「論より証拠。まずは兵士達を竜にお乗せください」
「良かろう……ユーベック殿がそう言われるなら間違いあるまい。お前達!」
「「「はっ!」」」
ゾンドルム将軍の合図で、先遣隊のうち6百がドラゴンに分乗していく。1頭のドラゴンに4人から8人、バルマリクにはゾンドルム将軍を始め10名が、僕の後ろに乗った。




