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西部方面軍、シャドガン砦を失う

ギーブル伯爵一行がカルデンヴァルト領に帰りついた頃、陽は完全に落ち夜になっていた。日没までマリーセン国王を追い続けた兵達は疲れている。ギーブルはそれ以上の夜間の行軍を避け、カルデンヴァルト西端の砦で夜を明かすことにした。


砦の中で落ち着いた頃、参謀ファルテン子爵が申し訳なさそうに言った。


「面目ございませぬ、司令官閣下。わたくしめの策が見抜かれたばかりに、マリーセン国王を取り逃がすことに……」

「ふん、まあ良い。これだけ追い散らしたからには、マリーセン国王軍も当分は立て直せまい。何より、アシマ・ユーベックの目論見(もくろみ)を防いだは大きいぞ。シャドガン砦を手に入れる当てが外れて、あの獣使い、今頃は地団太(じだんだ)を踏んでいるに違いないわ!」

「仰せの通りですな……シャドガン砦には手を出させず、マリーセン国王軍に対しては圧倒的勝利。これにて味方の士気も大いに上がりましょう」

「まさしく! おかげで、いずれ帝都からやって来る皇帝軍と優勢に戦えるというもの。アシマ・ユーベックの小細工には何度もしてやられたが、此度(こたび)は我が方が逆にそれを利用してやったというわけだ!」

「ははっ。御意にございます」


翌朝、ギーブル達は砦を後にした。指揮官達がそれぞれ自分の砦に引き揚げていく中、ギーブルはラグハスと共にシャドガン砦に向かう。司令部に戻る前に、シャドガン砦の無事な姿を見ておこうと考えたのである。


一行が城門の前に至ると、ラグハスが中に向かって大声で呼びかけた。


「私だ! 戻ったぞ! 開門せよ!」


だが、砦からの反応はなかった。不気味なほど静まり返っている。


「「「……?」」」


ギーブル達の胸に疑念が生じる。そのとき、城壁の上に黒髪の少年が1人、姿を現した。


「お帰り。遅かったね」

「なっ!? ア、アシマ・ユーベック! 貴様が何故ここにいる!?」


驚愕して問いかけるギーブルに、アシマは答えなかった。その代わりにアシマは、右手をさっと上げる。それを合図として、城壁の上にひるがえっていた西部方面軍の旗がうち捨てられ、代わりにリーラニア帝国近衛軍の旗が掲げられた。


「なっ……なっ……」


混乱するギーブル達。そして城壁の上にもう一つ、人影が現れる。その人影が大声で呼ばわった。


「ギーブル伯爵!」

「き、貴様は……ゾンドルム将軍!」

「シャドガン砦は我々皇帝軍がもらい受けた! お前達反乱軍は南北に分断されたのだ! もはや勝ち目はないぞ! すみやかに馬を下りて降伏せよ!」

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