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包囲ならず。そして追撃へ

翌朝――


「司令官閣下! 狼煙(のろし)が上がりました!」

「来たか!」


司令部で待機していたギーブル伯爵は、入ってきた報告に立ち上がった。


マリーセン国王軍がカルデンヴァルトに入ったら狼煙を上げ知らせるよう、ギーブルはカルデンヴァルト西側に位置する砦にあらかじめ指示していた。その狼煙を見て、司令部との間にある砦が順番に狼煙を上げていき、最終的にギーブルのいる司令部で見張りの目に入ったのである。


「いよいよですな……」

「うむ……」


緊張した面持ちの参謀ファルテン子爵に、(うなず)いて見せるギーブル。今頃は司令部以外の砦にも、マリーセン軍到着の知らせが届いていることだろう。


既に手筈(てはず)は整っていた。国王軍が神獣の谷を抜け、シャドガン砦に近づく頃を見計らい、西部方面軍の各軍が砦を出発する。やがて国王軍は西部方面軍の出撃を知り、慌てて引き返すだろう。神獣の谷で合流した各軍がそれを待ち受け、包囲殲滅する作戦である。別々の拠点から軍を移動させ、同時に一か所で集結するのは決して容易ではないが、長年自分の下で実戦を経験してきた西部方面軍の将兵なら可能だとギーブルは考えていた。


「我らは三刻後に出撃だ! 神獣の谷に向かうぞ!」

「「「はっ!」」」


そして指定の時刻。出撃準備を完了し城門の内側に集合した軍勢は、ギーブルやファルテンを先頭に司令部を出発したのだった。


「…………」


ギーブルは、ちらりと司令部を振り返る。そこには手や旗を振って見送る兵士達の姿があった。


万一の事態に備え、ギーブルは司令部に兵を二千程残していた。他の砦も同様である。そうしておけば、仮にカルデンヴァルト辺境伯軍が留守を狙ってどこかの砦に攻め寄せたとしても、まず落とせない。マリーセン軍を撃滅してから軍を返せば、難なく撃退できるというギーブル達の算段であった。


ファルテンがつぶやく。


「まさに、盤石(ばんじゃく)の構えでございますな」

「当り前よ。今より先、我らに負けはないのだからな」


だが、ギーブル達が急ぎ足で神獣の谷に向かう途中、前から偵察の騎馬が現れる。


「申し上げます! マリーセン国王軍は神獣の谷で反転しました! 既に、西に向けて撤退を開始しております!」

「な、何と!」

「読まれていたか……」


驚くギーブルの部下達。ギーブルは彼らを一喝する。


「うろたえるな! 奴らめ、どこかで我らの作戦に気付いたのであろうが、もう遅い! 直ちに全軍で追撃するのだ! 全力で追えば殲滅の可能性は十分にあろうぞ!」

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