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現れた三人

西部方面軍が占拠する要塞群の中で、シャドガン砦はバワーツ砦から最も近い位置にある。そのシャドガン砦の防備を任されている守備隊長のラグハスは、夜明けが近づく頃砦に帰りついた。数名の者がこれを出迎える。


「お帰りなさいませ」

「御苦労。夜が明け次第、皆を集めるように。司令官閣下の御意思を伝える」

「ははっ」


やがて夜が明けると、主だった部下が一室に集まった。そこでラグハスは、西部方面軍司令官ギーブル伯が帝国への反乱を決意したこと、そして自分もそれに賛同したことを告げる。


「「「…………」」」


話を聞き終えた部下達はしばらく黙っていたが、やがて一人が口を開いた。


「ついに、腹を(くく)るときが来たというわけですな。されど、誠の話なのでしょうか? 帝都の和平派共が、我々まで罪に問おうとしているというのは……」

「どうであろうな……嘘か誠か、今の我らに確かめる術はない。あるいは、我々を焚きつけるための司令官閣下の方便やも知れぬ」

「隊長殿……」

「とは申せ、このまま我らが事を起こさず帝国領に撤収すれば、カルデンヴァルト攻略の任を果たせなかった西部方面軍が大幅に縮小されるのは必定だ。さすれば、我らの中には路頭に迷う者も出てこよう。共にこれまで戦ってきた皆のためにも、一か八か、私は司令官閣下の思惑に乗ってみようと思う。もし勝てば、我らは富貴の身分となれる。兵士達にも、十分な恩賞を与えられよう」

「もし、敗れれば……」

「そのときは、覚悟を決めるしかあるまい。武人らしく、潔く散るのみよ」


ラグハスが笑顔を作って見せると、部下達は互いに顔を見合わせて頷き合った。


そのときである。一人の兵士が部屋に入ってくるや、声を張り上げた。


「申し上げます!」

「どうした?」

「砦の近くを巡回していた兵士が不審な者共を見つけ、連れ帰って参りました。何でも、外務大臣テーゼラー卿の随行員を名乗っているとか」

「何? テーゼラー卿の……」

「はっ。バワーツ砦から逃げて参ったとの由にございます」

「ううむ……」


ラグハスは唸る。テーゼラー卿が司令官のギーブルと密かに通じていることは、彼も知っていた。だが、テーゼラー卿の内通が露見し、カルデンヴァルト辺境伯に拘束されたことまでは知らない。何があったのかと怪しんだ。


「いかがいたしましょうか?」

「よし、会ってみるとしよう。ここへ連れて参れ」

「はっ!」


しばらくすると、兵士に連れられ、三人の男がラグハスの前に現れた。

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