外務大臣の随行員達
翌日の昼近く、バワーツ砦の一室に僕とシャルンガスタ皇女殿下、そして副長のデーグルッヘを含めた近衛竜騎士団の団員数名が集まった。部屋の奥の椅子に皇女殿下が座り、その左右に僕や団員達が侍立する。
そこへ、警備隊長のローグ・ガルソンが兵を率いて入ってきた。
「さっさと歩け!」
ローグ・ガルソン達は、リーラニア帝国の外務大臣テーゼラー卿の随行員達を連行していた。縛られたまま歩かされてきた随行員達は、部屋の中央に跪かされる。
「アシマ殿、こちらの三名になります」
「ありがとうございます。お手数をおかけしました」
「では、我らはこれにて。何かありましたらまたお呼びください」
退出するローグ・ガルソン達。随行員達は皇女殿下に気付いて平伏した。
「皇女殿下!」
「姫様……」
「面を上げなさい」
随行員達が顔を上げると、皇女殿下は僕を指し示して尋ねた。
「このお方がどなたか、分かりますか?」
「「「……?」」」
随行員達はそろって怪訝な表情を浮かべた。それはそうだろう。彼らは僕と数日前に顔を合わせていて、そう早く忘れるはずもない。質問の意図を理解しかねたに違いなかった。
「恐れながら、テイマーのアシマ・ユーベックでは……?」
一人がやっと口を開くと、皇女殿下は鋭い口調で叱責した。
「控えなさい!」
「「「!」」」
「アシマ様は大功を立て、父上より子爵、皇室魔道士、並びに竜騎将軍の位を授かったのです。あなた方が気安く名を呼んで良いお方ではないのですよ」
「「「ご、御無礼いたしました!」」」
また平伏する随行員達。彼らは僕が取り立てられたのを知らないわけだから、呼び捨てにしても仕方がないのだが、皇女殿下が強引に威圧した形だ。
「「…………」」
皇女殿下と目が合う。僕は頷き、後を引き継いだ。
「顔を上げるんだ」
随行員達が僕を見る。僕は彼らに尋ねた。
「僕が何をして、皇帝陛下のお取り立てを賜ったか分かる?」
「「「…………」」」
「皇女殿下の暗殺を企てたのは、宰相のガルハミラ候だった。企みが露見したガルハミラ候は、皇帝陛下に謀反を起こしたんだ」
「「「!?」」」
「その謀反を、僕が鎮圧した。ガルハミラ候は、一味に加わった者の名前を全て白状したよ」
「ええっ!?」
「そ、そんな!」
「馬鹿な……」
驚愕する随行員達。ガルハミラ候がしゃべったというのはもちろん僕の出まかせだが、随行員達がこれほど驚くということは、やはりテーゼラー卿は一味に加わっていたのだろう。




