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テイマーの悪だくみ再び

「っ……」


誰も一言も話せない中、クナーセン将軍の嗚咽(おえつ)する声だけがかすかに響く。将軍が泣くところを、僕は初めて見た。この場にいる他のみんなも、おそらくそうなのだろう。中にはもらい泣きをしている人もいる。


しばらくすると、クナーセン将軍は顔を上げ、ハンカチで顔をぬぐった。


「済まぬ。はしたないところを見せてしもうた……」

「将軍……」

「お爺様……」

「……それにしても、口惜しいものよ。我がカルデンヴァルトは、長きに渡りマリーセン王国の盾として、多くの領民に血と汗を流させてきた。その結果が、摂政のこの仕打ちとは……」


憤懣(ふんまん)やるかたない、という表情で辺境伯が嘆く。僕は続けて、竜騎士団の偵察で分かったことを話した。


「……ということで、西部方面軍は砦に籠って国王陛下の軍や、皇帝陛下の軍を迎え撃つ算段のようです」

「ううむ……カルデンヴァルトの各砦で籠城されては、国王陛下の軍はもとより、リーラニア皇帝陛下の軍といえども、容易には落とせぬであろうな……」


クナーセン将軍が唸る。カルデンヴァルトの城塞群は、将軍が自ら整備したものだ。それだけに、その堅牢さを良く知っているのだろう。


「クナーセン、先に到着する国王陛下の軍勢を、何とか援護できぬか?」

「フェンラートよ。儂もできればそうしたいのじゃ。されど我らがこの砦を出ては、西部方面軍の思う壺。国王陛下の軍勢共々、打ち負かされてしまうであろう……」

「…………」


辺境伯が黙り込む。今度はシャルンガスタ皇女殿下が口を開いた。


「アシマ様、どうにかならぬものでしょうか……?」

「……手がないわけではございません」

「「「!」」」


一同が息を飲む。続いて僕は、クナーセン将軍に尋ねた。


「将軍、ベルンゼ将軍というお方は信頼できますでしょうか?」

「おお……ベルンゼなら良く知っておる。あやつに兵法を教えたのは、この儂なのじゃ。国王陛下に絶対の忠心を持っておる。まず、信頼して良かろう」


僕は頷いた。今度は辺境伯に尋ねる。


「閣下、リーラニア外務大臣の随行の方々は、この砦におられますか?」

「ああ……外務大臣諸共、この砦に移して牢につないである。その者達を使うのだな?」

「はい」


短く返答すると、クナーセン将軍は愉快そうに笑う。


「ハッハッハ……アシマよ、また何ぞ、悪いことを考えておるな」

「はい、まずは皇女殿下のお助けを賜りたく存じます」

「喜んで……」


皇女殿下は、僕を見て微笑を浮かべたのだった。

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