目覚めて息苦しくて
「っ……」
どれくらい時間が経っただろうか。僕は目を覚ました。
目を開けたが、暗くて何も見えない。外から日光の差さない部屋にいるのか。それとも、今は夜なのか。
ふと、後頭部に柔らかい感触があるのに気付いた。枕ではない。これは……
「アシマ、起きた?」
顔の上から声がする。ようやく僕は、マルグレーチェに膝枕をされているのに気付いた。
「マ、マルグレーチェ……」
僕は体を起こそうとしたが、マルグレーチェにぐいっと肩を押さえ付けられ、そのまま寝かされる。
「いいから休んでなさいよ。今は敵も攻めてきてないし、みんな落ち着いているわ」
「う、うん……」
「聞いたわよ。西部方面軍の竜騎士隊を全滅させたんですってね。本当に、アシマの活躍にはいつも驚かされるわ……」
「……ありがとう。マルグレーチェも、怪我した人達の治療で大変だったね」
「ええ、大変だったわ……」
マルグレーチェは、だるそうに体を前に倒した。柔らかいものが顔に覆いかぶさってきて、一瞬、呼吸ができなくなる。
「うわっぷ!」
「アシマの部下の団員さん達も、治療しておいたわよ。まだ体力が回復してないみたいだけど、明日には戦線に復帰できると思うわ」
「あ、ありがとう……ところで僕、どれくらい寝てた?」
「半日ぐらいかしらね。今、夕方よ」
「夕方か……」
そのとき、ノックの音と、人の声が外から響いた。
「団長、お目覚めになられましたか?」
近衛竜騎士団の団員だ。きっと部屋の外に待機していて、僕達の話し声を聞き取ったのだろう。マルグレーチェは体を起こした。僕も起き上がり、ベッドに座って答える。
「いいよ。入って」
「はっ。失礼いたします」
団員が扉を開けると、外からランプと思しき灯りが差した。ここは地下室らしい。入ってきた団員は、跪いて報告を始める。
「申し上げます。団長がお休みの間に、我々で周辺の様子を探って参りました」
「どうだった?」
「はっ……西部方面軍はカルデンヴァルトの各砦に引き揚げました。今のところ、砦を出る気配はありません。砦の壊れた部分を修復し、また、厳重な警護の下に兵糧を運び込んでおります」
「そうか……」
西部方面軍は、砦に籠城して国王陛下や皇帝陛下の軍と戦う気らしい。僕は団員を労った。
「御苦労様。そう言えばデーグルッヘは?」
「副長は隣の部屋です。まだ目が覚めないようです」
「分かった。起きるまでそっとしておいて」
「御意!」
団員は頷き、立ち上がって部屋を後にした。




