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西部方面軍、砦から撤退

急ぐようにというボルダヴィクの連絡を受けてか、西部方面軍の兵士達も必死に砦を攻めていた。落とされても落とされても、城壁の上へ行こうと梯子を登っている。


「放て! 放て!」

「一人残らず叩き落せ!」


そこへ、近衛竜騎士団の団員達が殺到していった。団員達は砦の周りを飛びながら、梯子を登ろうとする敵兵に矢を射かける。さらに王宮獣舎のドラゴン達が、地上すれすれを飛んで、城壁に近づく騎兵や歩兵に体当たりし、次々に跳ね飛ばした。それでも何とか梯子にたどりついてしがみつく敵の兵士達だったが、士気の上がった砦の守備兵からの反撃もあって、上まで登り切れる数は目に見えて減っていく。


さすがに放置できなくなったらしく、敵の弓兵が僕達を追い払おうと矢を放ってきた。


「退避!」


地上に何百と居並んだ弓兵から一斉に射掛けられては、さすがにたまらない。僕は高度を上げるよう、団員達に指示した。そして敵の矢が届くか届かないかの高さに上がってから、再び矢を放ち始める。距離を詰めたときのような狙い撃ちはできないものの、相手の矢がほとんど当たらないところから、一方的にこちらが攻撃する格好だ。


ここに至って、もう砦を落とすのは無理と踏んだのか、西部方面軍の兵士達は城壁に登ろうとしなくなった。のみならず、梯子を下ろして全軍が撤収していく。引き上げていく西部方面軍の最後尾をしばらく追撃してから、僕達も砦の中に引き揚げたのだった。


「アシマ!」

「アシマよ!」


着陸してバルマリクから降りると、クナーセン将軍に辺境伯、それにシャルンガスタ皇女殿下が駆け寄ってきた。マルグレーチェの姿は見えないが、きっと今も兵士達の手当てを続けているのだろう。


「アシマ様! よくぞ御無事で……」


抱き付いてくる皇女殿下を支え切れず、僕はその場に仰向けに倒れてしまう。


「うわっ! で、殿下……」

「アシマ、良くやってくれた……」

「将軍……」

「敵竜騎士隊の全滅で、我が軍はうんと楽になった。加えて、王宮獣舎の加勢まで得られるとはのう……全てアシマ、お主のお陰じゃ」

「とんでもございません……」


軽く首を横に振る。クナーセン将軍は「フェンラート」と辺境伯を促した。辺境伯は頷き、周囲の兵士達を見渡してから大声を張り上げる。


「皆の者! 敵は退いた! 勝鬨(かちどき)じゃ!」


次の瞬間、砦を揺るがさんばかりの大歓声が沸き起こる。昨日の朝から眠っていなかった僕は、その声を聞きながら意識を手放したのだった。

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