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偽りの使命

僕は顔を上げ、国王陛下を見て言った。


「御事情、承りました」

「アシマ……」

「実は、皇帝陛下より国王陛下への御伝言がございます。恐れながら、他言をはばかる内容にございますれば、何卒(なにとぞ)お人払いを」


もちろんこれはハッタリだ。本当は、皇帝陛下からの伝言などない。でも、摂政に邪魔されることなく国王陛下を勝たせるためには、どうしても二人だけで話す必要があった。


オルバック伯爵が、間髪を入れず反応する。


「な、何を無礼な! 我らがおっては邪魔だとでも申す気か!?」

「御不快になられるのはごもっとも。されど皇帝陛下の御命ですので、御遠慮いただきたく」

「さ、さような大事であれば、国政を預かられる摂政殿下に……」

「その摂政殿下がおられぬゆえ、国王陛下に申し上げるのではありませんか」

「ぐっ……」


さて、どうなるか。僕は国王陛下の判断を待つ。しばらく目を閉じて考えていた陛下は、やがてまぶたを開き、厳かに告げた。


「皆、下がれ」

「へ、陛下!? なりませぬぞ! どうかお考え直しを!」

「下がれと申しておる」

「なりませぬ! この裏切り者の獣使いと陛下を二人きりにして、万一のことでもございましたら……」

「万一のことがあったら、どうだと申すのだ?」

「へ……?」

「仮に余がアシマに討たれたとて、飾り物の王が一人いなくなるだけではないか。そなたの地位は叔父上の下で、何も変わりはすまい」

「!」


国王陛下の言葉に、僕はどきりとした。そこまで思いつめていたとは。


周りの人達もまた、僕と同じように感じたらしい。多かれ少なかれ、狼狽の色を顔に浮かべている。


「お、お戯れを! わたくしめは陛下の忠実な家臣でございます! 陛下あってのわたくしめ! ですからどうか……」


そして、摂政を立てた舌の根も乾かぬうちに、国王陛下に媚を売って翻意を促すオルバック伯爵。そのとき、甲冑を着けた長身の軍人が一人、前に進み出た。


「されば陛下、我らは外にて控えておりまする」

「うむ……」

「ベルンゼ将軍! 貴様! 臣下でありながら国王陛下の身を案じぬのか! アシマ・ユーベックは謀反人クナーセンの処刑を邪魔立てしおった逆賊であるのだぞ!」

「我らはクナーセン将軍が謀反を企んだなどと、信じてはおらぬ」

「な、何だと! 摂政殿下が間違っておられるとでも……」

「告げ口をいたすか? いかようにもするが良い。私が生きて、カルデンヴァルトより戻れたらな」

「なっ……」


オルバック伯爵は、口を半開きにして固まった。

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