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集まらない兵力

今この場に、国の有力な諸侯はいない。これから集まってくるかもしれないので決め付けるのは早いが、多くは戦に勝てるかどうかを危ぶんで、参陣に消極的なのではないだろうか。諸侯がやってこないということは、兵力も集まらないということだ。


兵力が少なく、指揮も満足にできないとなれば、西部方面軍に対して勝ち目はない。そして、もし負ければ、国王陛下の権威が失墜するのは目に見えている。


摂政は、その事態を狙っているように思えてならなかった。国王陛下への批判的な声が高まれば、摂政がその地位にとって代わること、すなわち簒奪が現実味を帯びてくる。


国の実権を握るだけでは満足せず、そこまでやるのか……


もちろん、僕の勝手な想像だ。まだ確証はない。とは言うものの、カルデンヴァルトへの侵攻を計画していたリーラニアの宰相と結んで僕やクナーセン将軍を排除し、軍の力を削いでいたことを考えると、摂政への疑いの念はどんどん膨らんでいくのだった。


「…………」

「アシマ……?」

「!」


国王陛下の呼びかけに、僕は我に返った。自分でも気付かないうちに、怖い顔をしていたようだ。慌てて姿勢を正す。


「ご、御無礼(つかまつ)りました。して、諸侯の皆々様方はカルデンヴァルトまでの道中で合流されるのでしょうか?」

「……シャルンガスタ皇女襲撃の報が入った折、諸侯に出兵の準備を促す使いを送った。されど、多くの者は(いま)だ色よい返事をよこさぬ」


国王陛下は顔を曇らせる。オルバック伯爵が続けた。


「致し方あるまい。幾年も続いた戦で、どの諸侯も疲弊しておるのだ。此度(こたび)は国王陛下直属の軍勢の(ほか)は、少数の貴族の兵のみが参る。あまり過度な期待は抱かぬように」


伯爵の物言いは、他人事のようだった。実際、他人事なのかもしれない。もしも摂政が本当に国王陛下の権威失墜を目論んでいるなら、兵が集まらない方が好都合だ。


「「「…………」」」


涼しい顔のオルバック伯爵と対照的に、国王陛下や軍の幹部達は悲痛な面持ちだった。


「…………」


僕は少し目線を落とし、しばらく黙って考え込む。


兵が少数しか集まらないのは、どうやら確定らしい。このままでは間違いなく、国王陛下は西部方面軍に敗れ、ますます摂政のやりたい放題となるだろう。


追放された日の夜、危険を冒して僕を訪ね、バルマリクとポルメー、そして多額の金銭まで与えてくださった国王陛下。その陛下を、これ以上の窮地に立たせるわけにはいかない。


……やってやるか。

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