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オルバック伯爵と舌戦

「皇帝の真意……?」

「はい。此度のカルデンヴァルト侵攻は、皇帝陛下の本意ではございません。西部方面軍司令官、ギーブル伯爵が皇帝陛下の命に背いて始めたことにございます。既に帝都より、西部方面軍討伐の軍勢も出立しておりますれば、国王陛下におかれましては、帝都の軍勢と共闘いただきたく」

「そ、そのような話、信じられるものか!」


僕の話を聞いたオルバック伯爵は、声を荒らげた。


「皇帝が誠にカルデンヴァルト侵攻を命じておらぬか、怪しいものだ! 大方、共闘などと申して、我が軍を背後から討つ策であろう!」

「…………」

「そして貴様は、王都を追放されたのを逆恨みして、我々を騙しにきたに違いない! リーラニア帝都の軍勢が、我々に疑われずカルデンヴァルトに入れるようにと!」


やっぱりそう来たか。僕はオルバック伯爵の方を向いて言う。


「しからば、オルバック伯爵にお尋ね申し上げます」

「な、何だ……?」

「リーラニア帝国で最も、マリーセンとの戦に熱心であったのは、どなたか御存じですか?」

「ふん……さようなこと聞かれるまでもない。宰相のガルハミラ侯爵であろう」

「そのガルハミラ侯爵ですが、お亡くなりになられました」

「な、な、何だと!?」


立っていたオルバック伯爵は、一歩後ずさった。


「今、帝都で力を持つは和平派の財務大臣、セルウィッツ卿にございます。これでも信じられませぬか?」

「そ、そ、それも偽りであろう!」

「ガルハミラ候の訃報は、いずれこちらにも伝わりまする。さすれば分かることかと」

「だ、黙れ! へ、陛下! この者はリーラニア皇帝に味方し、陛下に仇を成さんとしております! 直ちに首を刎ね、リーラニア皇帝に送り付けてやりましょう!」


オルバック伯爵はどうあっても、皇帝陛下がカルデンヴァルト侵攻を命じたことにしたいらしい。僕は国王陛下に向かって、姿勢を正した。


「わたくしをどうするかは、国王陛下のお気持ち次第でございます。されどその前に、カルデンヴァルト辺境伯とシャルンガスタ皇女殿下の書状だけでも、陛下のお目通しを賜りたく」

「そ、そんなものは読む必要もない! どうせ偽書に決まっておるわ!」

「恐れながら、伯爵ではなく国王陛下にお願いしております」

「ええい! 衛兵、何をしておる! 早くこやつを取り押さえぬか!」

「やめよ!」


僕ははっとした。ずっと黙っていた国王陛下が、ついに口を開いたのだ。僕がその場に平伏すると、オルバック伯爵も姿勢を正す。

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