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侵攻作戦に暗雲

~西部方面軍Side~


アシマ達がバワーツ砦を後にした頃、西部方面軍司令官ギーブル伯爵は、司令部要員を率いて国境を越え、カルデンヴァルトに入っていた。設営された仮の司令部で、彼は参謀ファルテン子爵から、その日の作戦の結果を報告される。


「……といった次第で、我が軍はカルデンヴァルトの大部分を制圧しております。ほとんどの要塞はもぬけの殻でした故、容易に占領できました。敵が運び切れなかった兵糧も、奪えております」

「うむ。すこぶる順調ではないか。この分なら完全制圧も時間の問題であるな」

「ただ……敵の軍勢が(こも)るバワーツ砦の攻略に、少々手間取ってございます」

「それは一日では落ちぬであろう。何しろあのクナーセンが守っておるのだ。慌てるでない」

「ごもっともにございます。されど……」


口ごもるファルテンに、ギーブルは尋ねた。


「いかがした? 申せ」

「はっ……バワーツ砦にて、敵陣から多数の矢文が射ち込まれました。曰く、此度(こたび)のカルデンヴァルト侵攻は皇帝の許しなき独断専行である故、忠義の士はこれに加わるべからず。加われば帝都の軍に討伐されると……」

「下らぬ。敵の苦し紛れの謀略よ。捨て置け」

「そ、それが、全ての矢文にシャルンガスタ皇女の署名がございまして……一部の将校が兵士共にそれを読み聞かせたものでございますから、動揺が広がっております」

「な、何!? シャルンガスタがバワーツ砦で矢文を書いておるのか?」

「御意に」

「ううむ……」


ギーブルは唸った。今の時点では、西部方面軍の将兵全てが帝国への反逆に同意しているわけではない。そこで、まずは皇帝の命令の下カルデンヴァルトを攻略したことにし、その後に皇帝が西部方面軍の功績を認めず、撤退を命じたと偽って兵士達の怒りを煽り、反乱に加担させる計画であった。皇帝がカルデンヴァルト攻略を命じておらず、討伐軍まで来ると皇族の名で喧伝されては、その計画に支障が出かねない。


「よし。明日より敵から射ち込まれた矢文は、読まずに司令部へ届けるよう命じよ。読んだ者はその場で斬り捨てるのだ!」

「ははっ!」

「シャルンガスタがバワーツ砦におるなら、近衛竜騎士団もその近くにおるやも知れぬな」

「そのことでございますが……砦攻略の支援に向かいました一部の竜騎士隊が、全滅いたしました。昨夜の分も合わせれば20騎近い損害にて、これは軽視できぬかと……」

「な、何だと!?」


ギーブル伯爵は、再び驚愕した。

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