籠城戦始まる
西部方面軍の軍勢は、砦を取り囲むと一斉に攻撃を仕掛けてきた。ひとしきり弓矢や攻撃魔法の応酬をしてから、歩兵が城壁に近づき、梯子をかけて登ろうとする。城壁の上にいる味方の兵は、矢を射かけたり石を落としたりしてこれを防いだ。
僕は、竜騎士団員達に引き続き待機を命じてから、城壁の上に登った。上がってきた敵兵を一人ずつ突き落としながら状況を観察していると、そのうちに味方の兵士が叫ぶ。
「攻城塔が来るぞ!」
見ると、城壁と同じぐらいの高さを持った木の櫓が、多数の兵士に押されてこちらに近づいてくるところだった。あの中にはたくさんの兵士が潜んでいる。砦に横付けしてから、一気に城壁の上へ兵士を移動させて制圧するのだ。山がちなカルデンヴァルトの道を、苦労してここまで運んできたのだろう。
「下がって!」
攻城塔が城壁のすぐ近くまで来たので、僕はその辺りから味方を下がらせた。攻城塔にいた敵兵が十数名、一斉に城壁の上に渡ってくる。
「PUUU!」
だが彼らの足下には、ポルメーが薄く広がって待ち構えていた。スライムのぬめりに足を取られ、敵兵は次々に転んでしまう。
「うわあっ!」
「な、何だ!?」
「滑るぞ!」
そこへ味方の兵士が、次々に槍を繰り出した。横転して身動きの取れない敵兵が、一方的に討ち取られていく。だが、攻城塔の中にはまだ別の敵兵がいる。彼らは味方の亡骸を乗り越え、攻撃しようと武器を振りかざした。
「GUOOO!!」
頃合い良し。僕は隠れていたバルマリクを呼び出し、空に飛び上がらせた。バルマリクには鈎の付いた縄を結んである。バルマリクは城壁の上を飛びながら攻城塔に鈎を引っ掛け、強く引っ張った。
「「「うわあああ!!!」」」
たちまち攻城塔は横転し、中にいた敵兵と、下敷きになった敵兵の悲鳴が響き渡る。既に城壁の上に登っていた敵兵は、後続が来なくなったことで孤立無援となり、あっけなく突き落とされた。城壁の上から敵が一掃され、味方は歓呼の声を上げる。
「「「ウオオオオ!!!」」」
一方、敵の攻撃の勢いは弱まった。横倒しになった攻城塔が邪魔になって、思うように城壁に近づけなくなったのだ。だがそのとき、味方の兵士がまた叫ぶ。
「敵のドラゴン部隊だ!」
遠くの空に、十数騎のドラゴンが飛んでいるのが見えた。間違いなく西部方面軍の竜騎士隊だろう。砦の攻略を支援しに来たに違いない。僕はバルマリクを呼び戻すと、城壁を降りて建物に向かった。




