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接敵間近

頃合いを見計らい、僕は辺境伯に申し出た。


「……閣下。今の後詰(ごづめ)の話、皆様で手分けして紙に書いてはいただけないでしょうか?」

「うむ。敵に送り付けて読ませるのだな?」

「その通りです。西部方面軍がはっきり謀反の腹を決めたのは、おそらく昨日の夜のこと。末端の兵にまでは、まだその決意が伝わっていないはずです。帝都の軍が討伐に来ると知らせれば、動揺を誘えるかも知れません」

「よし。矢文にして、敵が現れたら射ち込んでやるとしよう。面白いことになるやも知れぬ」


クナーセン将軍が愉快そうに言うと、ローグ・ガルソンが立ち上がった。


「では、すぐに取りかかります」

「お待ちを。その矢文、わたくしが署名いたしましょう。書き上がったらわたくしのところまでお持ちください」


シャルンガスタ皇女殿下に言われ、ローグ・ガルソンは慌てて一礼する。


「御意!」


ローグ・ガルソンは急ぎ足で退出する。入れ替わりに、別の兵士が現れて跪いた。


「申し上げます。領民の避難はおおむね順調。西部の一時収容所に集まりつつあります。近隣諸侯の領地に移動させる手筈も、間もなく整うかと」

「うむ……」

「流石だな、フェンラート。これで我等も心置きなく戦えるというものじゃ」

「う、うむ。まあ、な……」


クナーセン将軍に答える辺境伯の物言いは、少し歯切れが悪いような気がした。何か気になることもあるのだろうか。尋ねようかと迷っていると、さらに別の兵士が入ってくる。


「申し上げます! 敵歩兵の姿が遠方に見えました!」

「「「!」」」


ついに来たな。後詰が来るまでこの砦を護り切れば僕達の勝ち。逆に、後詰が来るより早く砦を落とせば西部方面軍の勝ち。そんなところか。僕達は敵を迎え撃つべく、外に向かって走り出した。


…………………………………………


「良いか! 王都の国王陛下は無論のこと、リーラニア帝国の皇帝陛下もこの砦に後詰を送ってきておる! 我等はただ、この砦を護り抜けば良い! 護り切れば我等の勝ちぞ!」


城壁の上でクナーセン将軍が檄を飛ばす。それを聞いた兵士達は、大きな歓声を上げた。


「「「必勝! 必勝! 必勝!」」」


士気は十分だ。建物の中で出撃の準備を整える僕達竜騎士団も、合唱に加わった。


「「「必勝! 必勝! 必勝!」」」


今はまだ姿を見せていないが、西部方面軍の竜騎士隊もきっと、歩兵の援護のためにこの砦を襲ってくるだろう。昨日は回避した、竜騎士同士の戦いが発生するのはもう目に見えていた。

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