砦で再会
真夜中過ぎに西部方面軍の根拠地を出発した僕達は、一路カルデンヴァルトを目指して飛行した。途中、地上でかなりの数の松明が灯っていたので、西部方面軍の兵が実際に相当数、侵入しているのが分かる。
夜が明ける頃、僕達はカルデンヴァルト辺境伯の館近くに到達した。館の様子をうかがってみるものの、案の定、人の気配はない。防衛のため、みんな揃ってどこかに移動したに違いなかった。
とりあえず館に降り立つと、僕は残っていたワシを周囲に飛ばした。人の集まっている建物を見つけさせるためだ。団員達を休憩させながら待っていると、やがて一羽が戻ってきた。峠を一つ越えたところにある建物に、人間が集まっているらしい。距離と方向から考えると、きっとバワーツ砦だろう。
「ありがとう。御苦労様。これ、帰ってきたみんなと分けてね」
御褒美の餌をそこに残し、僕達は出発した。砦に近づくと、城壁の上に多数の弓兵が居並び、こちらを射落そうと狙うのが見える。西部方面軍ではないと言っても、こちらは全員がリーラニアの軍装なのだから区別できるはずがない。敵と勘違いされても仕方がなかった。
どうやって攻撃されずに接近するか。考えようとした僕だったが、無用に終わった。城壁の上にクナーセン将軍がいて僕に気付き、兵士達に弓を下ろさせたのだ。
「将軍!」
手を振りながら高度を下げ、僕達は砦の中に着陸した。全員でドラゴンから降りて待っていると、クナーセン将軍も城壁の上から降りてきた。
「アシマ! 無事であったか!」
「将軍! 御心配をおかけしました……」
「お爺様! ただいま帰りましたわ!」
「おお! マルグレーチェも元気そうじゃのう!」
三人で半ば抱き合うようにしながら再開を喜んでいると、そこへ辺境伯が警備隊長のローグ・ガルソンを従えて現れた。
「アシマではないか! 良くぞ戻った……」
「閣下! ただいま戻りました!」
「して、その恰好はどうしたことだ? それにこの者達は……?」
僕の服装と竜騎士団の団員達を見回し、訝る辺境伯。説明しようと僕が口を開きかけたとき、シャルンガスタ皇女殿下が進み出てきた。
「辺境伯殿。その儀はわたくしからお話しいたしましょう」
「こ、これは皇女殿下。よもや殿下までお戻りとは……とりあえず皆、中へ」
ひとまず僕達は、砦の中の部屋で話すことになった。僕は、ドラゴンを建物の中に隠すよう団員達に命じてから、副長のデーグルッヘを伴って辺境伯達の後に続いたのだった。




