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散っていくワシとドラゴン

「危険? だからどうだと言うのです!?」


シャルンガスタ皇女殿下は、僕に喰ってかかってきた。


「危険は承知の上と申したはずです。父上の前であれだけ大見得を切っておきながら、供の者達の安否も確かめずにおめおめ帰ることなどできません!」

「い、いや、しかし……」

「アシマがこう言うんだから、とっとと尻尾を巻いて帰ればいいじゃないですか」

「お黙りなさい!」


横から口を挟んできたマルグレーチェを一喝し、皇女殿下はさらに続けた。


「そもそも、帰りの移動が安全と本当に言い切れますか? 偶然、西部方面軍の竜騎士隊に遭遇することも絶対にないと?」

「そ、それは……絶対に安全とは申しかねますけど……」

「絶対でないならば、アシマ様の近くにいるのが一番安全。そうはなりませんか?」

「ううう……」

「どうかお連れください。何でもいたしますから! この後マリーセン王国の方々と折衝をするのに、わたくしはきっとお役に立てるはずです!」

「…………」


結局、僕は皇女殿下を説得できず、ついてきてもらうことになってしまった。殿下は意気揚々と、マルグレーチェは不満タラタラの様子で輿(こし)に乗り込む。僕達もそれぞれのドラゴンに跨った。


夜中とはいえ、空高く飛んでいくと目撃される危険性が高まる。僕達は地上すれすれを飛んでカルデンヴァルトを目指した。先頭の僕がランプを持ち、後の人達はそれを目印についてくる形だ。


「ようし。じゃあ、みんな頼むよ」


飛びながら僕は、帝都から連れて戻る途中だったワシ達に別のランプを持たせて四方に放つ。西部方面軍の竜騎士隊はかなりの数が囮に釣られて帝都に向かったが、彼らも馬鹿ではない。あれが囮である可能性に気付いていて、残った竜騎士に僕達を探させているかも知れない。なので念のため、さらに囮を使って西部方面軍の目を誤魔化すことにしたのである。もちろん五十騎の大編隊で飛ぶ僕達だから、どこかで地上の兵士の目に留まる恐れはあるが、その頃には西部方面軍の司令部から大分離れているはずだから、慌てて攻撃の準備をして襲ってこようとしても間に合わないだろう。


後は、クナーセン将軍やカルデンヴァルトのみんながどこにいるかだ。将軍やカルデンヴァルト辺境伯が、西部方面軍の動きを見過ごすはずはない。侵攻が始まることをとうの昔に察知して、迎え撃つ準備を整えているだろう。今頃は普段政務を行う館を離れて、どこか防衛に適した拠点に移動しているに違いなかった。

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