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袋と色つきランプ

元の野営地から少し離れた森の外れで、僕達は天幕が燃え上がるのをじっと見つめていた。側に立つ副長のデーグルッヘがつぶやく。


「団長の読みが、当たりましたな……」

「あれだけ不穏な雰囲気を出されちゃ、ね……」


苦笑する。ギーブル伯爵がシャルンガスタ皇女殿下と話している間に、僕は野営の場所を変えると決めていた。そして伯爵が城に帰っていった後、すぐに団員を派遣して、この場に残していくための天幕を調達した。野営用の天幕はもちろん自前のものを持ってきていたけど、無くさないに越したことはないので、代わりを西部方面軍からいただくことにしたのだ。


届いた天幕をみんなで設営し、かがり火を立てて僕達がそこにいるように見せかけた。一つだけ豪華な、おそらく皇女殿下用の天幕があったので、その中にちょっとした悪戯を仕掛けることにする。床にランプの油を撒いておいて、中にロープで火のついたランプを、光が漏れないよう布で覆った状態で吊るしたのだ。天幕を乱暴に揺らすか、床のロープに足を引っ掛けるかするとランプが落ちて床が燃え上がる仕組みである。


仕掛けを終えてから、僕達は歩いて地上を移動し、森の中に姿を隠した。交代で休みながら見張っていると、果たして竜騎士隊が現れて元の野営地を襲撃する。例の仕掛けも発動して火の手が上がった。襲ってきた奴を少し脅かしてやれればいいぐらいに思っていたけど、一人おっちょこちょいがいたようで、したたかに体が炎上させて死にかかっていた。


「…………」


デーグルッヘと同じく、僕の側に立っていた皇女殿下は険しい表情で元の野営地を眺めていたが、やがて僕に話しかけてきた。


「アシマ様。あの燃えている男は、もしやギーブル伯爵ではありませんか?」

「えっ? そう言われてみれば、体型が似ているような……」

「わたくし達を(あや)めようとした報いですね。本当に、アシマ様がおられなかったら今頃はどうなっていたことか……」


皇女殿下の声は、少し震えているようだった。考えてみれば、短い間に二度も殺されかけたのだ。怖くなって当たり前だろう。


「さて……」


僕は二人の団員を呼ぶと、赤と緑のランプを持って帝都へ飛ぶように言った。僕達が帝都に逃げ帰ると見せかけるためだ。


「「御意」」

「帝都に着いたら、襲われたことを皇帝陛下とゾンドルム将軍に伝えてね。それから……」


僕の後ろには、大きめの袋が二つ置いてあった。それを二人に、それぞれ一つずつ手渡す。

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