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西部方面軍の計画

「面目次第もございませぬ。この借りは後日必ず……」


(こうべ)を垂れるボルダヴィク。既に始まっているカルデンヴァルトへの全面侵攻において、数騎とはいえ空を制するのに必要な竜騎士が減るのは、好ましくない事態であった。


だが、空中を飛ぶ光の追跡を命じたのは、他ならぬギーブル伯爵である。あまり厳しく、ボルダヴィクを責めることもできなかった。


「……もう良い。竜騎士隊は元の任務に復帰させよ」

「御意」

「行くぞ、ファルテン!」

「お、お待ちください司令官閣下! まだお手当てが……」


回復術師による火傷の治療はまだ終わっていなかったが、それに構わずギーブル伯爵は立ち上がり、自室へと向かった。ファルテン子爵が慌てて後を追う。


部屋に戻ったギーブル伯爵は、椅子に腰を下ろして毒づいた。


「またしても、あの小童め! この儂を愚弄しおって!」

「まあまあ。今はそれよりも、カルデンヴァルトの占領でございます」


ファルテン子爵がなだめると、ギーブル伯爵は頷く。


「それもそうだ。侵攻は順調か?」

「カルデンヴァルト軍の伏兵を警戒しながらですので、やや遅めですが、国境一帯の占領はおおむね完了してございます。明朝を期して、さらに奥へと進出いたします」

「うむ……だが、帝都が我らに(くみ)せぬと分かった以上、あまり時間はかけられぬ。明日からは一気に攻め入って占領地域を広げよ。加えて、ここにある武器・兵糧も、カルデンヴァルトへ運び込むのだ。帝都の軍勢に奪われてはならぬ」

「はっ。かしこまりました」


コップに酒を注ぎ、飲み干すギーブル伯爵。しばらくすると、思い出したように言った。


「……そう言えば、カルデンヴァルトにクナーセンが入っているという話であったな」

「はっ。テーゼラー卿の報告で、確かそのように」

「いかにクナーセンといえども、今のカルデンヴァルトの兵力ではろくに戦えまい。一刻も早くカルデンヴァルト全域を制し、クナーセンを討ち取るのだ。さすれば、その後にやって来るマリーセン王国の軍など、殲滅するのは容易(たやす)い」

「その通りでございますな。されど、その後には帝都の軍勢が我らを討伐に参ります。それを打ち破らねば……」

「フッ……案ずるな。地上の兵も竜騎士隊と同じよ。ぬるい訓練ばかりの帝都の軍と、実戦に明け暮れた我が軍は練度が違う。それに……」

「それに……?」

「……いや、これは今は秘しておこう。後の楽しみという奴よ」


そう言って、ギーブル伯爵は思わせぶりに笑った。

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