暗殺計画再び
「無論だ! カルデンヴァルト攻略は西部方面軍の、そして我がギーブル伯爵家の長年に渡る悲願! 腑抜けの皇帝如きに命じられて止めるものか!」
その言葉を聞き、ファルテン子爵は安心したように言った。
「ははっ。それでこそ閣下でございます。伊達に大陸に武名を轟かせてはおられませぬな」
「ふん、世辞などいらぬわ! それにしても、ガルハミラ侯があれほどの役立たずとは思わなんだ。行く行くは帝国の実権を掌握し、西部方面軍の幹部を国政の中枢に取り立てるなどと申しながら、よりによってあのアシマ・ユーベックに足元をすくわれるとは!」
激高するギーブルを、ファルテンはなだめる。
「まあまあ、そう仰せになられますな。アシマ・ユーベックの帝都行きを許したは、我が西部方面軍竜騎士隊の失態にございます。ガルハミラ候ばかり責められますまい」
「それぐらい分かっておるわ! されど忌々しい……」
ギーブルは机に座ると、置いてあった酒瓶からコップに注ぎ、一口呷った。
「ふう……」
少し気分を落ち着けると、ギーブルはファルテンに言う。
「のう、ファルテン。どうだろう? その竜騎士隊に、名誉挽回の機会をくれてやるというのは……」
「と、仰いますと……?」
「皇帝が儂の行動を認めぬ以上、もはや我らと帝国の手切れは必定。そうは思わぬか?」
ファルテンは頷いた。
「かくなる上は、それも致し方ございませぬな」
「なればよ。あのアシマ・ユーベックとシャルンガスタの首級を上げておけば、我が軍の士気も高まろうというもの」
「なるほど……良いかも知れませぬな」
「うむ。竜騎士隊長のボルダヴィクを呼べ!」
「ははっ!」
やがて馳せ参じたボルダヴィクは、甲冑姿でギーブル伯爵の前に跪いた。
「お呼びでございますか?」
「うむ。聞くが良い。我ら、帝国への反乱に決した」
「おお、ついに……」
「さればその方、直ちに西部方面軍の全竜騎士をこの城に集めよ。なるべく騒がしくならぬようにな」
「はっ。して、それから……?」
尋ねるボルダヴィクに、ギーブルは答える。
「城の外のかがり火のある場所に、シャルンガスタ皇女とアシマ・ユーベック、それに近衛竜騎士団が野営しておるのを知っておるか?」
「はっ。存じております」
「夜が明けぬうちに竜騎士隊の総員で奴らを襲い、皆殺しにいたせ。ただし、シャルンガスタとアシマ・ユーベックの首は焼くでないぞ。後日、全軍に反乱の意を示す折に晒し、帝国何するものぞという機運を高める」
キャラ固めの変化に伴って、ギーブル伯爵と副官(参謀)の会話の流れが変わっております。
混乱した方は申し訳ありません……




