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皇女様激怒

「何と……」

「殿下。そのような……」


シャルンガスタ皇女殿下の申し出に、謁見の間は驚きの声で満ち溢れた。皇帝陛下も意外そうな表情で殿下に尋ねる。


「シャルンガスタ。急に何を申すのだ?」

「こちらに戻る際、カルデンヴァルトに共回りの者達を残して参りました。今こうしている間にも、彼らはわたくしの戻りを待っておりましょう。西部方面軍がカルデンヴァルトに侵攻していけば、彼らの命運もどうなることか……この帝都で座して待つことなどできません。どうかわたくしをお遣わしください」

「ううむ……」


頭を垂れる皇女殿下に、皇帝陛下は難しい顔をした。


確かに、勅使として下手な役人を送ったら、西部方面軍にまた軽んじられる恐れがある。皇女殿下が皇族の権威をもって屈服させようとするのは、有効なやり方だろう。


とはいえ、万一の場合はこちらに鎮圧の意志がある以上、勅使といえども西部方面軍から危害を加えられたり、拘束されたりする恐れがないとは言えない。皇女殿下はもう既に、十分過ぎるほど危ない橋を渡ってきた。この上さらに冒険をしてもらうのは、さすがにどうだろうか。


そのとき、財務大臣が進み出た。


「お待ちくださいませ、殿下。西部方面軍の腹が未だ読めぬ以上、軽々しく殿下にお出ましいただくのは……」


僕と同じように考えたらしく、財務大臣は皇女殿下を止めにかかった。殿下は言い返す。


「危険は承知の上です。今、西部方面軍を止めるには、それなりの地位ある者を遣わさねば……」

「殿下」


今度は僕が皇女殿下に話しかけた。


「アシマ様?」

此度(こたび)は、わたくし共にお任せ願えませんでしょうか? お付きの方々には、わたくしから良く申し上げておきますので……」

「何ですと!?」


僕の言葉を聞いた皇女殿下は、いきなり激怒した。


「そこの聖女は連れていくのに、わたくしはお供できないと仰るのですか!?」

「えっ? いや、あの……」

「国難に遭って命を捧げる覚悟が、そこの聖女ごときにはあってわたくしにはないと!? わたくしを侮辱なさるおつもりですか、アシマ様!?」

「そ、そんなつもりじゃ……」

「でしたら、一緒に来いと仰ってください!」

「ううう……」


こうなってはどうしようもない。僕は救いを求めるように皇帝陛下を見た。今、皇女殿下を止められるのは、皇帝陛下しかいない。


「…………」


皇帝陛下は、目を閉じて少し考えていたが、やがて言った。


「シャルンガスタ。勅使として西部国境へ向かうが良い」

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