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爵位を捨てようとしたら将軍になった件

言い終えてから、僕は皇帝陛下の反応をじっと待つ。


円満に暇をくれるならそれでよし。許されなければ、黙ってリーラニア帝国を去るつもりだった。どちらにしても爵位や皇室魔道士の称号に未練などない。クナーセン将軍やカルデンヴァルトのみんなを助けに行く方が大事だ。


「…………」


皇帝陛下はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。


「シャルンガスタ」

「はい。父上」


シャルンガスタ皇女殿下を呼び寄せた皇帝陛下は、腰の剣を鞘ごと帯から外し、皇女殿下に持たせる。皇女殿下は皇帝陛下の剣を捧げ持ちながら僕のところまでやってくると、僕の手を握ってその剣を持たせた。


「あの、これは……?」

「アシマ。いや、ユーベック子爵。良くぞ申した」

「ははっ……」

「皆の者!」


突然、皇帝陛下は廷臣達に向かって大声を出した。


「討伐軍の地上部隊を整え、西部国境へ進めるにはしばし時がかかろう。余はユーベック子爵を竜騎将軍に任じ、地上部隊に先んじて西部国境に派遣せんと思うが、どうか?」

「えっ? あの……」

「「「陛下。御英断にございます!」」」

「えええ!?」

「うむ。さればユーベック子爵。そなたを竜騎将軍に任ずる。近衛竜騎士達を率い、勅使と共に西部国境へ向かうが良い。反乱軍が勅使の説得に応じればよし。説得に応じぬ場合は、討伐軍の一翼を担って反乱軍を討つのだ」

「あっ……」


こりゃあやられたな。僕は心の中で苦笑した。


僕がカルデンヴァルトに向かうのを止められないと、皇帝陛下は悟ったのだろう。どうせ止められないのなら、出奔されるより皇帝の命令で派遣という形にした方が、格好は付くというわけだ。


「御命令、(うけたまわ)りましてございます」


僕は皇帝陛下の剣を両手で捧げ持ち、頭を低くした。思っていたのとは違う形になったが、行かせてくれるというなら文句はない。


「うむ……」


皇帝陛下は頷き、廷臣達を見回して言った。


「ユーベック子爵に続く者はおるか? 討伐軍の地上部隊を率い、反乱軍を討つ者は?」

「陛下! わたくしを出陣させてくださいませ!」


後ろから声がしたので振り向くと、髭面の軍人らしい男性がこちらに進み出てくるところだった。男性は僕の側まで歩いてきてから、皇帝陛下の方を向き跪く。陛下は男性に声をかけた。


「ゾンドルム将軍か」

「はっ! 地上部隊を率いるお役目、何卒(なにとぞ)このゾンドルムにお任せくださいませ! 昨日はお役に立てませんでしたが、必ずや反乱軍を平らげ、御心を安んじ申し上げます!」

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