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恩賞の条件

そうか。なるほど。僕は心の中で頷いていた。


リーラニア帝国で最も強いとされる魔道士が、皇帝陛下に背いて反乱に加担した。それだけでも帝国として名誉なことではないのに、その最強の魔道士を、ひょっこりやってきた外国の二級魔道士が倒してしまった。これではリーラニアの魔道士が低く見られるし、皇帝陛下には反乱を鎮圧できる家臣もいないのかと、世間から侮られかねない。


しかし、事実をちょっと脚色して、技量の割に外国で不当に低く評価されていた魔道士を、皇帝陛下が前もって抜擢していて、そいつに反乱を鎮圧させた形にすれば、少しマシになる。リーラニアの魔道士の技量が低いという批判を抑えられるし、皇帝陛下の人材登用は確かだと評判も高まるだろう。


だから昨日、サーガトルスと戦う前から僕を評価し、皇室魔道士にすると決めていたことにしたいのだ。シャルンガスタ皇女殿下を助けたからとか何とか、理由はどうにでも付けられる。


きっとこれが、政治というやつだ……


僕が考え込んでいる側で、魔道大臣は皇帝陛下に報告していた。


「只今、推挙の手続きを進めておりまする。おそらく、次回の評議会定例会議において承認される運びとなりましょう。最終的には、皇帝陛下の御裁可を……」

「うむ」


皇帝陛下が頷く。続いてマルグレーチェが呼ばれ、僕と同じく宰相の陰謀を暴くのに功があったということで、賞金の授与が発表された。


「ありがたく、拝受申し上げます」


皇帝陛下に感謝の言葉を述べるマルグレーチェ。これで僕達への恩賞の話は終わったと、みんな思っているに違いない。


でも、そういう訳には行かなかった。僕は顔を上げ、皇帝陛下に向かって言う。


「恐れながら、申し上げます」

「む? いかがした?」

「爵位並びに皇室魔道士の栄誉を賜るに際しまして、陛下にお願いしたき儀がございます」

「おお、何なりと申すが良い」


皇帝陛下の許しを得た僕は、『お願い』の内容を口にした。


「はっ……万が一、の話でございますが、いつの日かマリーセン王国にて追放処分が解かれた折には、王国への帰参を何卒お許しいただきたく」

「何……?」

「ええっ……?」


皇帝陛下、そして皇女殿下が眉をひそめる。


昨日、皇女殿下から叙爵の話を聞いてから、どう応えるか、僕はずっと考えていた。一晩考えて出した結論が、追放が解除されたら帰国する許可をあらかじめ皇帝陛下から得ておいて、マリーセン王国に戻れる目を残しておくというものだった。

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