死刑宣告は突然に
「何を申すか! 無礼な!」
摂政は立ち上がり、声を荒らげた。
「クナーセンよ。儂が無知蒙昧故にユーベックの追放を命じたと申すか!?」
「誤解にございまする。落ち着かれませ、殿下」
クナーセンは摂政を宥めようとした。だが摂政はさらに語気を強め、クナーセンを詰る。
「そなたの企みは見え透いておる。儂が誤った判断を下した。摂政たる資格の無い無能である。そう触れて回りたいのであろう!」
「何を言っておられるのです! お気は確かですか!?」
摂政は椅子に座り、さらに続ける。
「リーラニア帝国との仮の休戦は成った。後は皇帝の名代たる第三皇女がこの王都に参って正式な講和条約が結ばれれば、長きに渡った戦は終結する」
「その儀は存じております。それが如何しましたか?」
「白々しい。そなたら軍人は、活躍の場が無くなり地位を失うことを恐れておろう!」
「有り得ませぬ! 戦とならば、真っ先に傷付き倒れるは我ら軍人。軍人こそ、誰よりも平和を願っておりまする」
「既に王都に噂が流れておるぞ。クナーセン将軍は軍を率いて王宮を占拠し、国の実権を奪わんとしていると」
クナーセンは立ち上がって抗議した。
「何と! そのような無責任な噂をお信じになると仰せか!?」
「衛兵! この不忠者を捕えよ!」
摂政の指示で、謁見の間に控えていた衛兵達が飛び掛かる。衛兵に両腕を押さえられたクナーセンに、摂政は告げた。
「死罪だ!」
「叔父上! クナーセン将軍には功績があります。死罪は行き過ぎでは!?」
それまで黙っていた国王が、たまりかねて口を挟む。だが摂政は首を横に振った。
「陛下。陛下はまだお若い。政はこのわたくしめにお任せください」
「…………」
国王は何も言えなかった。クナーセンは衛兵の腕を振り解くと、摂政に向かって言い放つ。
「殿下がそう仰せなら、最早何も申しますまい。刑場へはわたくし自ら歩いて参ります」
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クナーセン将軍が王宮に向かった後、僕は旅支度を解くことなく、庭先に椅子を出して座っていた。
正直、復職への期待はあまりしていない。将軍のような大人物が、僕のために動いてくれたというだけで十分だった。
「…………」
どれくらい待っただろうか。僕はいつしか、座ったままうとうとし始めていた。だがそのとき、近づいてくる馬蹄の音で目を覚ます。
将軍の使いだろうか。立ち上がって門の外に出てみると、果たして一騎の騎馬兵がこちらに向かって来るところだった。




