ソフィお嬢様、相談を受ける(ウセと出会ってから10日後)
ぎゃふんといわせられなかったよ
今日のソフィは、機嫌がわるかった。その原因は、ウセの件であった。さかのぼれば昨日のことであった。
20:01 ソフィの家
「ソフィよ。話したいことがある」
ソフィの父親は神妙な趣でソフィに言う。
「なんですの?」
ソフィは何の話だと思った。少し考えてウセの件だろうと思った。
「実は、お前に頼まれていたぎゃふんといわせる件なのだが……すまぁあああああんん。むりだったあああああ」
ソフィの父親が土下座をして謝る。威厳のある父親がやや涙目で、先ほどなで威圧的雰囲気は消えていた。
一方で、ソフィは困惑する。ウセは、あの威厳ある父をこんなにするほどの存在だったのかと。
「どうされたのですか、お父様」
「いやね、あいつぎゃふんと言わそうと思ったらさ。王様自ら注意されたんだぁあああああ」
「……そ、そんな」
ソフィは、王様がどうしてと思った。それどころか、王様が保護するほどだとは思わなかった。
一方で、ソフィの父親は娘にいい所をみせたかったが全く見せられないことに罪悪を感じていた。
「すまないぃいいい、まじでぇええええ、そふぃぃいいいいい」
「……お、お父様。仕方がありませんよ」
ソフィは父を慰めた。
「そふぃぃぃいい」
ソフィに慰められた父親の精神状態が一気に悪い状態から良い状態に回復する。
「おまぇはやさしいなぁあああああ」
「この程度で動揺しては、クロスレードの名は名乗れませんわ」
ソフィは腰に両手を合わせて、ふんすという雰囲気で言う。
「さすが、ソフィ。お父さんはうれしいぞ」
ソフィは父親に褒められて満足だった。だが、心の中ではウセがぎゃふんと言われないことに何とも言えなかった。だが、不機嫌な顔をソフィは、父の前では顔に出さずにいるのであった。
16:55 カフェ“ペトーネ”
先ほどの嫌なことを思い出しつつも悪い記憶を消そうと、キャラメルアイストーストを食べていた。アイスの上にトーストを乗っけ、トッピングにキャラメルソースをかけたものである。
それをもきゅもきゅと食べていた。その食べ方は、美しく洗練されていた。
「……」
そして……
「なんで、僕は彼をついほうしたんだぁああああああ」
とトレンは叫ぶ。
トレンは、アランを追放したことに後悔していた。
「もう、旅の間に彼のおいしいご飯を食べられないとか辛すぎる」
「そう、大変ね……あ、お替りいただけるかしら」
ソフィは、アランの話を聞きながらキャラメルトーストアイスの追加の注文をする。
「……彼を呼びもどす選択肢はないのですね」
「そうしたい。そうたいよ。でも、彼を危険な目にあわせたくないんだ」
「……難儀な問題ですわね」
「……うん」
「ちなみに……そんなにアランさんのご飯はおいしいのですか」
「もちろん。だから、彼のご飯を食べられないのが辛くて……。実は3日間遠征に行ったんだけど……地獄だった」
トレンは、遠い目で言う。それを見たソフィはこれ本気でまずいやつだと思った。今でこそ、食事事情は改善されて旅がしやすくなった。しかし、それでも野宿となるとハードな部分があった。
ソフィも何度か魔物退治で遠征に行っているので、アレンが作る食事には興味があった。
どんな料理なのかしらとソフィが考えていたら
「キャラメルトーストアイスです」
と店員がキャラメルトーストアイスをソフィの前に置いて立ち去る。
ソフィのキャラメルトーストアイス2皿目を食べ始める。
「……ああ。アランのご飯が食べたい」
トレンは頭を抱える。
「……」
ソフィは、長くかかりそうだと思った。だが、ソフィは彼の話が終わるまでさらにキャラメルトーストアイスを追加で3皿とノンカフェインの紅茶を5杯ほど飲む。
それは……ウセのことを忘れるためのようでもあった。