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出会いは最悪です

 生きているといろいろありますよね。

 青色のお花  15:11


 ソフィは、絵にかいたわがままなお嬢様である。大貴族の娘として育ち、黄色の髪にドリル頭。もしゲームや小説に出てきたら典型的な悪役令嬢ともいえるような人だろう。


 そんな彼女であるが、人生において、ある意味であるが1人の男と出会って大きな壁にぶち当たっている。


 ことの始まりは、青色のお花と呼ばれる菓子屋。そこは毎日売り切れの超人気スィーツが売られている。ソフィは、それがどうしても、どうしても食べたかった。それも突然である。


 事前に言えば従者が朝いちばんで並ぶのであるのだが、突然食べたいと思ったソフィお嬢様。学校が帰りに立ち寄ることにしたのである。


 従者は、もう売り切れているだろう。きっと、大きく怒鳴られるだろうなと思いながら死んだ目で馬車を走らせていた。


 店に着くと、お店の行列はなく。最後の1人が人気スィーツを購入していた。従者は、ああ、これヤバいやつだと思いながらもお嬢様を止めることはできず。


「そこの平民」

 ソフィは、強気な態度で話しかける。


 平民と呼ばれた男は、完全に黒ではないが黒の髪にブラウンな髪をしていた。


「……なんでしょうか」


 落ち着いた声で返事をする男。それに対して、ソフィは自信満々な態度でこう言う。


「そのスィーツを私に渡しなさい」


「……」


 男は、この人何を言っているのだろうと思った。だから、

「無理です」

 と率直に言った。


 それを言った従者は口をあんぐりと開けた。まじかよという目で見た。もちろん、このやり取りを見ていた、青色のお花と呼ばれる菓子屋も似たような反応を見せていた。


 ソフィのフルネームは、ソフィ・アルフェリア・クロスレード。このステリア王国の始まりの王の血を引く貴族である。わかる人が見たら、首に吊るした家紋を見れば、黙って渡すのであるが。悲しいことに、この男はソフィが大貴族であることを何1つ知らなかった。


「あなた、正気ですの」


 お嬢様であるソフィ。男の正気を疑う。


「いや、いきなり渡してと言われても無茶がありますよ。何が何だか理解できてないし」


「ふむ、確かに。では、言いますは。私、そのスィーツが食べたいの。だから、渡していただけるかしら」


 ソフィは見下すように男に言う。


「無理です」


 男は即答で断る。この人無茶苦茶だなと思って、さっさと帰りたいと思った。


「あなた、私を知らないの?」


「ん?知らないですよ」


 ソフィは、自分が何者であるかを知らないことに大きく失望した。だが、しっかりとポーズを決めて

「ソフィ・アルフェリア・クロスレードと言えばわかるかしら」

と言う。


「いいえ、知りません」

 男は死んだ目で答える。


「う、ウセさん。ソフィ・アルフェリア・クロスレード様は、大貴族です。超えらい人です」


「……」


 ウセは、それを聞いてソフィを見て、お菓子を見てソフィを見る。ふんすと自信満々の顔でウセを見ている。


 世の中には、無茶苦茶な理論をなげかけてくることもある。31年ほど生きているウセ。多少なりと、権力の闇を見ていた。だから、ここで逆らえば、自分がこの地で暮らすのに支障をきたすことは簡単に理解できた。


「さぁ、早く渡しなさい」


「……少し待ってください」


 ウセは、彼女にお菓子を渡すことはなかった。代わりに、ソフィから背を向けてお菓子屋の店員に優しい笑みを浮かべて

「すみません。今日、大事な買い物があったのを忘れていました。返品できますか」

と言う。


 店員は、

「ああ、できるよ。問題ないよ」

と言ってさっき払ったお金をウセに渡す。


「これで、お菓子を買えますよ」

 ウセは、かわいそうな目で見ながら、ソフィに落ち着いた声で言う。


「……」


 それに対して、ソフィからは自信満々の顔は消えていた。ただ、唖然としていた。


「じゃあ、また来ますね」


 ウセは、店員にそう言うと、速足で歩き街の雑踏に消える。一方、ソフィはぷるぷると震えていた。


「何、あいつ……」


 自分をかわいそうな目で見るウセが苦にくわなかった。他の人よりも、いい服や宝石で着飾ることができる。おいしいものも毎日、食べられることができる。他人ができない贅沢ができる。だから、何1つかわいそうなことはないはずなのだ。


 だが、何1つおびえた声も出さず、かわいそうな目で見たウセを忘れることができずにいた。


「お嬢様……」


「何かしら」


「お菓子は買いました。帰りましょう」


「……いらないわ」


 ソフィは、スィーツを食べる気分でなかった。この何とも言えないもやもやが心を占めていた。


 そして、これがソフィとウセとの出会いであった。


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